天下の嫌われ者「転売屋」はなぜ根絶できない? 地方民が明かす「東京の人には理解できない」切実な事情

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転売屋から買う人、実は多い?

 TwitterなどのSNS上では同調圧力が強いため、「転売屋から買っている」とは口が裂けても言えない雰囲気がある。しかし、転売屋のおかげで助かっている地方出身者は潜在的に多いのではないだろうか。現に、A氏の地元にも、躊躇はしながらも転売屋から買う人は何人もいるそうだ。

「転売屋が商売として成り立っているのは、転売屋に文句を言いながらも、陰でこっそりと買っている人がいるからだと思いますよ。むしろ、アンチ転売屋を叫ぶ人も周りに合わせてそう言っているだけで、実際は転売屋から買っているかもしれない」

 A氏は「僕の気持ちはわかってもらわなくていい。ファンの風上に置けない人と言われても結構です」と話すが、筆者が話を聞く限り、かなり熱心なファンであると見受けられた。なお、ライブに遠征できるときは遠征しているといい、すべてのグッズを転売屋から買っているわけではないと付け加えておく。

 このように、A氏の場合は「定価で買いたいけれど買いに行けない」「買いに行くためにかかる経費が高すぎる」「公式が通販をしてくれない」ため、転売屋を利用しているのだ。

買う側に立つと見えてくる社会問題

 この話を、筆者が東京出身で東京在住の友人に話したら「そんなことは思いもしなかった」と驚嘆していた。そして、こうも語る。

「転売屋は大嫌いだけれど、転売屋から買う人の気持ちは少しわかる。だって僕は、身の回りにモノがあふれていて、普通に買えるのが当たり前だと思っていたから」

 これまでマスコミが転売問題を扱う場合、転売屋側に取材することが多く、そのたびにSNSは「転売屋許すまじ」という論調で盛り上がっていた。対して、転売屋から買う側にはほとんど取材してこなかったように感じる。もちろん、転売屋の行為には眉を顰めるものが多い。しかし、買う側の「どうしても欲しい」という気持ちは否定されるべきなのだろうか。

 東京に住んでいる人が、急に地方の田舎町に転勤させられたケースを想像してみてほしい。これまで当たり前に手に入ったグッズが身近で手に入らなくなった。売っている店までは交通費もかかり、買いに行く時間もない。それでも手に入れたい。こうなった場合、転売屋を100%利用しないとあなたは言い切れるだろうか。

 転売屋がいなくならない理由は様々だが、買い物難民の存在が転売屋を蔓延させる要因のひとつになっているのは間違いないようだ。転売は社会問題化しているが、その対策においては企業や小売店側の負担も大きく、現場が疲弊しているという意見もある。特に、希少性が高い限定グッズの販売の仕方や、フリマサイトのルールはどうあるべきか。様々な観点から議論がなされるべきであろう。

山内貴範(やまうち・たかのり)
1985年、秋田県出身。「サライ」「ムー」など幅広い媒体で、建築、歴史、地方創生、科学技術などの取材・編集を行う。大学在学中に手掛けた秋田県羽後町のJAうご「美少女イラストあきたこまち」などの町おこし企画が大ヒットし、NHK「クローズアップ現代」ほか様々な番組で紹介された。商品開発やイベントの企画も多数手がけている。

デイリー新潮編集部

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