天下の嫌われ者「転売屋」はなぜ根絶できない? 地方民が明かす「東京の人には理解できない」切実な事情
なぜ転売屋を利用するのか
近年、とりわけ転売が盛んなのは、コミックマーケットで頒布される同人誌や、アニメやアイドル関連のグッズである。この分野ではライブ会場限定、店舗限定などの限定品がとにかく多い。会場に行かなければ手にできない商品が普通にあるため、転売に拍車がかかっているのだ。筆者は転売屋が仕入れたものを買う側の人間に取材し、心境を聞いた。
「転売屋? 一言で言うなら、神様ですよ」
開き直ったようにそう話すのは、秋田県在住で声優アイドルファンの男性A氏である。彼がこの日身に着けていたアイドルグッズ、持参してきた漫画家のサイン本は転売屋から入手したものという。繰り返すが、転売がなくならない理由は、定価より高い値段でも買う人がいるからである。A氏はなぜ買ってしまうのか。
「簡単な理由ですよ。このアイドルのグッズは東京のライブでしか手に入らないし、サイン本も東京の本屋でしか売っていない。東京に行く交通費や宿泊費を考えたら、転売屋から買った方が遥かに安いんです。しかも朝一で買いに行っても品切れで買えない可能性もあるでしょう? わざわざ交通費までかけて手ぶらで帰るリスクを考えたら、多少のお金を上乗せしてでも僕は転売屋から買います」
東京までの交通費が高すぎる
参考までに、秋田駅から東京駅までの新幹線の往復交通費は合計約3万6000円である。宿泊代を7000円と見積もると、都心在住者よりも約4万3000円前後も出費が増える。これはアイドルのライブに3回は行ける費用だ。仮に夜行バスで宿泊代を浮かせても、往復1万2000円はゆうにかかるだろう。
対して、A氏が推している声優アイドルの場合、転売屋がグッズ代に上乗せするのは3000~5000円ほど、高くても1万円ほどという。なるほど、これなら転売屋から買った方が遥かに安上がりである。
「東京の人たちは交通費がかからないから羨ましいですよね。もちろん、地方から遠征する人もたくさんいると思いますし、素直に凄いと思います。でも僕は仕事も低賃金だし、そもそも仕事がピンポイントで休めない。それでもグッズは欲しいんです。公式が通販をやってくれないなら、転売屋から買うしかないんですよ」
ちなみに、A氏は人づきあいが苦手で転職を繰り返し、現在は福祉関連の仕事をしている。手取りは15万円ほどで、連日連夜の仕事で肉体的に疲弊することばかりという。そんな時に出会った「推し」が、が自分を救ってくれたのだそうだ。以来、グッズの収集に邁進しているのだと語ってくれた。
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