天下の嫌われ者「転売屋」はなぜ根絶できない? 地方民が明かす「東京の人には理解できない」切実な事情
転売屋から「買う」層を分析すると
限定のグッズや流行のアイテムをどうにかして手にしたい――。こうしたニーズを狙うのが“転売屋”、俗にいう“転売ヤー”である。昨今、転売屋ほど嫌われている存在はないだろう。
「好きなものが転売屋のせいで手に入らない」
「転売屋のせいで本当に欲しい人のもとに渡らない」
「高く売って利益を出す転売行為そのものが許せない」
……などなど、SNSを見れば転売屋はとにかく憎悪の対象になっているのがわかる。売り出されたばかりの商品が、時には定価の倍以上の価格でフリマサイトに出品される。そんな光景は、もはや日常茶飯事である。
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しかし、転売屋が存在するのは「転売屋から買う人がいる」からに他ならない。定価より高くても欲しい人がいるから、値段が吊り上がっていく。そして転売屋がビジネスとして成り立つのだ。
では、いったいどんな人が転売屋から買っているのか。事情は人によって様々なので一概には言えないが、ひとつに挙げられるのが地方在住者である。筆者は地方を取り巻く社会問題を取材しているが、転売屋がいなくならない要因は、東京と地方の格差が影響していると考えている。
欲しいものが手に入らない
インターネットの普及で、情報の面では東京と地方の格差がほとんどなくなった。しかし、商品の入手難易度に関してはむしろ格差が拡大しているように思う。現状、地方在住者には「買いたいのに買えない」ものが多い。だから止む無く、転売屋を利用している人は少なくないのだ。
いやいや、店に行けば品物はあるだろう、地方でもAmazonでいくらでも買えるじゃないかと思う人がいるかもしれない。確かに、「生活必需品」ならいくらでもネット通販で買えるようになった。しかし、転売屋がターゲットにしている「嗜好品」は、ネットで簡単に買えないものが多いのだ。
たとえば、鉄道の切符もそんなもののひとつだ。長引いたコロナ騒動や人口減少に伴い、鉄道会社が切符販売の窓口を相次いで閉鎖している。社会問題としても取り上げられることが多い話題だが、とりわけ、地方在住の一部の鉄道ファンにとっても深刻な問題である。
窓口の代替手段として券売機やネットの予約サイトが存在するものの、発売されると数秒で売り切れる臨時列車、最終列車、一番列車などの特別な切符は、システム上のタイムラグがあるため、窓口に並ばなければ入手が極めて難しい。ところが、地方では地域の拠点駅からも窓口がなくなる例が相次ぐ。こうなれば買いに行く手間がかかりすぎるため、フリマサイトやオークションサイトを利用する人が増えるというわけだ。
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