「心臓ロボット手術」の驚くべき進化 費用は数百万円から数万円にダウン、将来は“日帰り”も

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保険適用で数百万円の手術費用が数万円に

 米国で開発された「ダビンチ」は、日本でも導入が進んでいる。泌尿器科や婦人科、呼吸器外科などで使用されているが、心臓外科での導入例はまだ数えるほどだ。

 現在、ロボット手術が可能な心臓疾患は、「大動脈弁閉鎖不全症」や「狭心症・心筋梗塞」、「心房中隔欠損症」など。「心臓弁膜症」の「僧帽弁閉鎖不全症」と「三尖(さんせん)弁閉鎖不全症」は2018年から保険適用になった。

「自己負担額が300万円から400万円程度だった手術費用が、保険の適用により数万円から25万円程度で済むようになりました」(渡邊医師)

 渡邊医師は、ロボット心臓手術のメリットとして、以下の点を挙げる。

【心臓ロボット手術のメリット】

1:手術の精度が高い
 360度を映す3Dカメラ映像は、ズーム機能で拡大も可能。細かい血管の縫合や神経の剥離を正確に行うことができる。

2:創(手術の傷口)が小さい
 手術の内容によって異なるが、切開創は平均して1センチ~1.5センチ程度の穴が3~4カ所。傷口が小さいため感染症など合併症の心配もなく、術後の回復が早い。

3:出血が少ない
 創が小さく、なおかつ手術中は映像の拡大で精密な手術が可能なため、出血量が極めて少ない。

4:痛みが少ない
 胸骨や助骨を切る必要がないため、術後の疼痛が大幅に低減される。

5:早期退院
 手術中の感染症など合併症の可能性が低く、患者の負担が少ないため、術後の回復が早い。

 患者へのダメージが少ないロボット心臓手術。“日帰り手術”の実現に向けて、さらなる進歩が期待されている。

取材・文/段勲(ジャーナリスト)

デイリー新潮編集部

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