「心臓ロボット手術」の驚くべき進化 費用は数百万円から数万円にダウン、将来は“日帰り”も
胸を切り開かず1円玉サイズの穴を開けるだけ
心臓手術といえば、患者の安否を気づかう家族が、手術室の入り口まで見送るのが常。メスで胸を切り開くハードな外科治療を伴うからだ。だが医療技術の急速な進歩により、近年は2、3時間という短時間の心臓手術も可能になった。術後回復が早い患者なら、入院3日ほどで病院を退院して、鼻歌まじりで帰宅できるのだ。
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さらには「白内障」や「前立腺肥大症」などの手術と同様に、心臓手術もやがて日帰りに……と語るのは、「チーム・ワタナベ」を率いる渡邊剛医師(「ニューハート・ワタナベ国際病院」院長=東京都杉並区)だ。日本ロボット外科学会の理事長も務める渡邊医師は、心臓手術で6805例(2022年12月まで)の実績を持つ。
とくに内視鏡手術支援ロボット「ダビンチ(ダヴィンチ)」を使った心臓手術(ロボット心臓手術)の件数は1500例以上(2023年6月まで)にのぼり、2019年以来なんと4年連続で世界一。成功率も99.6%とほぼパーフェクトだ。現在では、海外の患者も「チーム・ワタナベ」を頼って来日するという。
「心臓の手術は命にかかわる難しい治療ですから、患者さんの不安も大きいでしょう。『ダビンチ』を使ったロボット心臓手術では、私たち執刀医が手で操っていた器具に代わり、ロボットの内視鏡カメラやメス、鉗子(患部をつかむ機器)が届き難い部位まで正確かつ迅速に入ります。現在では最善の治療法です」(渡邊医師、以下同)
具体的には、どのような手術なのか。
従来の心臓手術では、精密な医療機器が並ぶ広い手術室に、循環器内科医や麻酔医、看護師、臨床工学技士など10人前後のチームが配置に付く。司令塔役は心臓血管外科医だ。まずはメスで胸を縦に20センチほど切り開き、胸骨を切るのが常道だった。
「ロボット心臓手術では胸を切開せず、1円玉サイズ程度の小さな穴を3か所開ける だけ(キーホール手術)です。ロボットアームの先端に取り付けた内視鏡カメラや鉗子などを、そこから挿入します」
手術台の脇には、3本のロボットアームを備えた装置「ペイシェントカート」が置かれる。司令塔役の心臓外科医は、少し離れた場所にある「サージョンコンソール」の前が定位置だ。
サージョンコンソールは医師の顔がすっぽりハマる構造で、その内部では3D内視鏡カメラがとらえた術野が3D映像として映し出される。心臓外科医はそれを見ながらロボットアームを遠隔操作し、1ミリの誤差も認めない精密な心臓手術を遂行するのだ。
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