中日・立浪監督の“ゴミ箱キック”だけじゃない…過去には「ファンがベンチに殴り込み」「ベンチ内乱闘」も勃発

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味方同士で“バトルモード”に

 ベンチ内で選手同士の乱闘が勃発したのが、1997年9月23日の広島対ヤクルトである。

 2年ぶりVまでマジックを「5」としたヤクルトだったが、1点リードの5回の守備で、正田耕三の左前安打を処理したホージーが二塁にとんでもない悪送球を投げたことが騒動のきっかけとなる。

 幸い吉井理人がフォローし、二塁を狙った正田をアウトに取ったものの、一歩間違えば、一打同点のピンチを招くところだった。

 ベンチでこのプレーを見ていたベテラン内野手の辻発彦は、見過ごしにできないと思い、この回を無失点で切り抜けると、戻ってきたホージーに注意した。

 すると、悪送球のことなど忘れたように真中満と談笑していたホージーは、突然怒りをあらわにすると、辻を両手で突き飛ばし、壁際までグイグイと押し付けた。辻も必死に防戦し、“バトルモード”に突入したが、小早川毅彦が慌てて両者の間に入り、何とかことを収めた。

 ふだんのホージーは、辻と仲が良いのだが、直近6試合で本塁打ゼロの打撃不振に対するイライラも手伝い、ついカッとなってしまったようだ。間もなく冷静さを取り戻したホージーは、辻に謝罪し、握手で仲直りした。

 だが、結果的に辻の心配は、最悪の形で現実のものとなる。勝利寸前の9回に追いつかれたヤクルトは、延長10回2死一、二塁のピンチで、加藤博人が野村謙二郎に左前安打を許してしまう。ライナー性の打球でホージーは前進守備とあって、二塁走者・前田智徳を本塁で刺すのは、容易と思われた。

 ところが、ホージーの送球は、弱肩が災いして本塁から10メートルも三塁側にそれ、無念のサヨナラ負け……。これには野村克也監督も「ふつうなら(前田は)走らん。完璧にアウト。まったく、どこへ投げとんのや。(打球が)レフトにだけは行くなと思っとったのにな……」とボヤキが止まらなかった。

 ヤクルトは、2014年8月19日の巨人戦でも、リリーフエースのバーネットがバレンティンの拙守をなじったことがきっかけで、助っ人同士の“ベンチ内乱闘”が繰り広げられている、まさに「歴史は繰り返す」である。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

デイリー新潮編集部

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