今だから明かせる「闇営業問題」「反社との闘い」の裏側 吉本前会長の大崎洋が語る
叱られて反省して…
〈ところが、19年6月に発覚した「闇営業問題」で、吉本は再び窮地に陥る。宮迫博之ら吉本の芸人たちが、反社会的勢力との宴席で余興を行い、金銭を受け取っていたことが明らかになったのだ。
事件の遠因として、吉本と芸人たちの間に契約書がないため、ギャラが不当に搾取されているなどの疑惑が報じられてもいた。吉本に所属していた加藤浩次は、MCを務めていた朝の情報番組で事務所批判を繰り返し、業を煮やした吉本側が、放送局へ圧力をかけたとのうわさまで飛び交った。〉
それらはまったく根拠のない、あらぬうわさでした。仮にも吉本がそんなことをしていたとしたら、毎朝ワイドショーで扱われないでしょう(笑)。放送局とのパワーゲームみたいなことを吉本がやり出したら、一時的にわれわれが勝ったり疑惑の追及から逃れることはできたかもしれませんが、最終的には組織全体に負の臭いが充満したと思います。
社員や芸人がニコニコしていない会社は100年続くことができません。正直えらい目に遭いましたが、批判は受け止めて頑張り耐えて反省して、しっかり出直すことを選びました。
それで、所属する6千人以上の芸人に希望を聞くべく社員がヒアリングをしたところ、99%は契約書もいらず現状のままでいいと回答しましたが、それでも吉本に所属する旨を記した「所属覚書」を全員分作成しました。
やっぱり紳助の一件で体制を整えた後に起きたことでしたから、本当に悔しさ、虚しさが残りました。吉本は事件、事故が毎日のようにあって、そのたびに叱られて反省して、何とか膝についた土をはらっては、また叱られ反省する。それを繰り返してきた会社なんです。
反社が仕掛けてきたときは…
創業家との「お家騒動」が起き、反社会的勢力などが吉本を乗っ取ろうと仕掛けてきた時は、いきなり会社へ名指しで電話がかかってきて、話し合おうと。こちらも逃げるのはイヤだし、他の社員と連れ立って行ってビビッてると思われたくなくて、いつも一人で行く。柔道もボクシングもできないし、実際はビビッてるんですけどね(笑)。
本気で命取るぞっていうパターンと、吉本の大崎ってどんなやつやねん。ちょっと顔を見ておこうか。ビビらしたろかみたいなパターンと、とりあえず脅せば金取れんちゃうかっていうパターンなど、いろいろでしたね。
いきなり郵便が送られてきて、なんやと思って封筒を開けたら〈亡国の輩、吉本興業大崎殺す〉とか、あの頃はそんなことばっかりでした。社員も誰が敵で味方か分からん状態でしたが、いい経験をしました。
まもなく自分は70歳になるんですが、あれだけ会社のために修羅場をくぐり抜けてきたんやから、もう少し居座っても罰あたらんやろ。そんなふうに思っていた時期もありました。
とはいえ、吉本は“大崎興業”じゃないし、私もサラリーマンやと思って生きてきましたから、会社にずっと残っているのは格好が悪い。でも、まだ会社に借金あるし、退職金と相殺してちょっとプラスになるかとか、ここ数年、気持ちが揺れ動いていたんです。
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