民放連ドラ7年ぶりの芦田愛菜、中村倫也は池井戸作品…夏ドラマ「お薦め3選」の見どころ

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

出演陣が途方もなく豪華…推さないわけにはいかない1本

 7月16日スタート:「日曜劇場 VIVANT(ヴィヴァン)」(日曜午後9時) 主演・堺雅人(49)、助演・役所広司(67)

 推すべきかどうか迷った。ストーリーが一切伏せられているからだ。明かされているのは煽り文句のみ。「敵か味方か、味方か敵か―冒険が始まる。」「前例のないエンタメが今夏幕を開ける!」「“限界突破! アドベンチャードラマ”始動!」。30年以上、テレビの記事を書いているが、こんなケースは過去にない。

 ドラマは「1に脚本、2に役者、3に演出」というのが古くからの常識なので、ストーリーが不明な現段階では度外視すべきなのかも知れない。ただし、出演陣が途方もなく豪華なので、推さないわけにはいかないと考えた。

 堺、役所、阿部寛(59)、小日向文世(69)、林遣都(32)、松坂桃李(34)、竜星涼(30)、二階堂ふみ(29)、高梨臨(34)。よく1つの作品にこれだけ集められたものだと感嘆する。

 演出と原作を担当する福澤克雄氏の引退作になるからだと芸能プロダクション関係者たちは口を揃えている。福澤氏は「半沢直樹」(2013年、2020年)を大当たりさせた凄腕の演出家だ。

 福澤氏は現在59歳。上席役員待遇である。TBSでは過去、やはり名演出家だった故・鴨下信一氏がドラマをつくりながら常務にまで昇進したが、これは異例。会社側から経営に専念することを望まれている可能性がある。

 現在、プライムタイムのドラマの制作費は3000万円前後。2000万円台も珍しくない。その中で「日曜劇場」のみ約4000万円と言われている。高視聴率を獲得し続け、一流企業ばかりの安定スポンサー(花王、SUNTORY、NISSAY、SUBARU)に支えられているからだ。

 しかし、この作品の制作費は4000万円でも収まらないのではないか。掛け値なしの豪華キャストである上、中央アジアロケもあるというのだから。やはり福澤氏の引退作なのかも知れぬ。

 ここ数年のテレビ界で一番の大成功作になるかも知れない。半面、死角もある。出演陣に大物が集まり過ぎているということだ。

 損な役、目立たぬ役で起用することに迷いが生じかねないのではないか。それを避け、大物たちにそれぞれの見せ場をつくろうとすると、今度は無理が出てくる恐れがある。大物に気をつかわずに済むのだろうか。俳優の起用法も注目点である。

 福澤氏が原作を担当することを心配する声もあるようだが、これは問題ないはず。故・黒澤明監督を始め、古くは監督がストーリーや脚本をつくるものだった。今も山田洋次監督(91)は自分で脚本を書く。

 夏ドラマも話題満載である。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。