ネット上では総スカンも「菅前総理の銅像」が秋田県で大フィーバー 地元出身のライターが明かす“おらが町”のウラ事情

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選挙区以上の“菅フィーバー”

 ところで、菅氏は確かに湯沢出身なのだが、選挙区は横浜である。国会議員に当選してからも秋田県とはほとんど縁がなかったし、地元のために立派な橋を造った、新幹線誘致に貢献したなどの話も聞かない。長らく出身地では無名の存在だった。そんな菅氏だが、2012年に第2次安倍晋三内閣で内閣官房長官に就任すると、秋田県出身者として急にクローズアップされはじめる。

 2020年9月14日、菅氏が第99代内閣総理大臣に就任した際の、秋田県、特に湯沢市周辺のフィーバーたるや凄まじいものだった。首相指名選挙の様子は湯沢市役所でパブリックビューイングが行われ、多くの市民が見守った。首相に決まるとお祝いの花火が打ち上げられ、垂れ幕まで掲げられた。さらに、市街地でちょうちん行列までも行われた。確実に選挙区以上の盛り上がりだったと思う。

 地元紙の「秋田魁新報」は号外を発行し、朝刊でも一面トップで、「自民総裁に菅氏 本県出身初の首相へ」と大々的に報じた。菅氏がパンケーキ好きというエピソードが報じられると、県内のパンメーカーのたけや製パンが「菅総理大臣ご就任記念 もちもちパンケーキ」なる商品まで発売している。

 これらの例を見ても湯沢市が空前の菅フィーバーに湧き、菅氏がアイドル的な人気を誇っていたことがわかるだろう。

銅像建立を記念した土産物が続々登場

 銅像の建立計画は、菅氏が内閣官房長官を務めていた時代に立ち上がった。内閣総理大臣に就任したことで一層の盛り上がりをみせ、あれよあれよという間に寄付金が集まって具体化したのである。菅氏は約1年であっさりと総理を辞任してしまったのだが、銅像建立の計画は着々と進んでいった。

 かくして地元民が待ちわびていた銅像が建立されると、菅フィーバーが再燃した。JR湯沢駅前の土産物店ではなんと、銅像建立を記念した「たたき揚げかりんとう」などのお菓子や日本酒といった土産物まで売り出された。銅像を記念した土産物など売れるのかと心配してしまうが、売れているのだという。

 ネット論客の批判との間に確実に温度差が見られるが、そもそも、どんなにネットで批判が巻き起ころうと、地元民は痛くも痒くもないのである。なぜなら、秋田県は高齢化率日本一であり、圧倒的に高齢者が多いためだ。彼らはそもそもTwitterをやらないため、銅像が叩かれているなど夢にも思っていないのである。

 銅像の建立に関わった人の名簿を見ると、いわゆる地元の名士が大半だ。彼らの中にはTwitterをやっている者などほとんどいないだろうし、ネットニュースも見ないだろう。仮にこのニュース記事がどんなにバズろうとも、地元に与える影響などかすり傷にすらならないのだ。

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