ネット上では総スカンも「菅前総理の銅像」が秋田県で大フィーバー 地元出身のライターが明かす“おらが町”のウラ事情

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 秋田県湯沢市の中心駅、JR湯沢駅前に菅義偉前総理の銅像が建立され、5月27日に除幕式が行われた。これは、菅氏が秋田県湯沢市の出身であり、県出身者で初の内閣総理大臣を務めた功績を記念したものである。土台も含めた高さは約2.3mで、菅氏の顔が出身地の秋ノ宮方面を向いているという、謎に凝った仕様になっている。完成に合わせて行われた祝賀会には菅氏本人も出席、地元の政財界の関係者約230人が参加して大盛り上がりだったという。【山内貴範/ライター】

巻き起こる批判

 銅像はネット上でも知られることになり、Twitter上では瞬く間に批判の嵐となった。例えば、政治評論家の加藤清隆氏は「こんなものを地元に建てさせて喜んでいるようじゃ、菅さんも情けない。こういうものは自分が亡くなって後、有志が建てるものだ」「正直、菅さんに幻滅しました」とツイート。

 ジャーナリストで政治系ユーチューバーの白坂和哉氏は「菅義偉の『胸像』除幕式。そこには菅義偉『先生』と記されている!『先生』って何ですか?」「菅義偉氏の件のように、特定の個人を顕彰し胸像・銅像まで建てるのは民主的とは言えないし、対象の人物が存命であれば尚更である。ここには秋田県湯沢市の自民党関係者の嫌らしい思惑が透けて見える」などとツイートした。

 他にも、「ゴミに使われた税金」「よくもまぁ恥ずかしげもなく建てた」「権力を持つと最終的には名誉を欲しがるんだな」「何も国民のためにしてない菅に対して、こんなことをいつまでもやってるから日本は衰退したままなんだ!」などといった批判が巻き起こった。「(湯沢市は)行かない観光地確定」と宣言する人もいた。

地元に政治的な思惑はゼロ

 しかし、湯沢市と隣接する秋田県羽後町出身の筆者からすれば、こうした批判は的外れに映る。第一、この銅像は菅氏が望んで作られたものではない。前湯沢市長の斎藤光喜氏らが発起人となり、地元の有志が中心となって「おらが町の総理大臣を顕彰したい」という純粋な気持ちで建立したものである。建立にかかる経費は約2100万円の寄付によって賄われた。したがって、税金の無駄遣いとか、行政との癒着などといった批判も当たらない。

 実際、建立に携わった関係者には、政治的な思惑はほとんどないと言っていい。JR静岡駅前の徳川家康像、JR岐阜駅前の織田信長像、JR深谷駅前の渋沢栄一像のような感覚で、地元出身の偉人を讃えたいという思いで建立されたに過ぎない。ちなみに、関係者に名を連ねる元湯沢市長の鈴木俊夫氏は、現在は離党しているというものの、かつては秋田県初の日本共産党員の首長として知られた人物である。

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