金の延べ板など4億8千万円を寄付した箕面市の87歳 「自宅以外の資産は家族に残さない」

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「自宅以外の資産は家族に残さない」

「引退後は店のある3階建てのビルと、周りの駐車場3カ所の不動産収入がありました。酒もタバコもギャンブルもやらず、仕事一本で家内も無駄遣いは一切せず、夫婦そろって倹約家だったからお金がたまった。休みの日は家の用事を済ませたりして、あまり遊ばなかったね。店が忙しいことが楽しかった。過労で入院したこともあるけど、家内は店を休んだらいかんと、お客さんのお相手をしてくれて感謝しています」

 そんな中嶋夫婦には、隣町で飲食店を営む一人息子がおり孫もいると聞けば、多額の遺産を譲る選択肢はなかったのか。

「生前贈与は高くつくし、息子は怒るだろうけど、能力のない者にお金を持たせたらあかんというのが信条。自宅は譲るけど、それ以外の資産を家族に残す選択肢はなかったよ。今回の寄付にも何も言ってこない。孫娘は“じいちゃん良いことしたね”と喜んでいたしね」

「生活する分のお金しか残していない」

 ちなみに、リタイア後は夫婦で旅行を楽しみ、アジアや欧米各国を周遊。国内も宗谷岬から与那国島まで訪れ、行きたいところも無くなったとか。5年前には免許も返納していたが、実は本格的に終活を始めたのは今年に入ってからだった。

「1月末に転んで3月中ごろまで入院した。右手が動きにくくなって、もうあかんなと。先生からも年やから手術はやめとこうと。どうせ最高の医療を受けた偉い人でも、80後半とか90を過ぎたら亡くなる。だったら私も終活しようとね。万が一で入る老人ホームも決めてあるし、預金も全部吐き出して生活する分のお金しか残していない。出すもん出して丸裸になれたと思っていますよ」

 そう笑う中嶋さんの表情は快活そのもの。まだまだ余生を楽しめそうだ。

週刊新潮 2023年7月6日号掲載

ワイド特集「乱」より

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