鈴木エイトだけが知る山上徹也の知られざる肉声 事件に関する本について「自分の一部だけが抜きとられている」
歴代最長政権を築いた宰相が白昼、凶弾で命を奪われる――。前代未聞の事件は今なおわれわれに多くの“問い”を残したままだ。テロリストは今、何を思うのか。衝撃的事件からの1年を振り返る。
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「あれから1年がたちますが、事件を巡る謎は解明されないまま。教団に関わる問題も決着の糸口すら見えていません」
と語るのは、鈴木エイト氏。統一教会と政治との関係を長年取材してきたジャーナリストだ。
「まもなく山上の公判前整理手続きが始まります。報道によれば、彼は“裁判ですべてを話す”と言っているとか。そこで明らかにされる動機はどのようなものなのか。刑を軽くするという意図を無視して、犯行時の心理状況をありのままに述べる可能性もある。それはこれまで断片的に報じられてきた“動機”とは別物になるのかもしれない」
昨年7月8日。奈良市の近鉄大和西大寺駅前で銃撃され、安倍元総理は帰らぬ人となった。
以来、1年――。凶弾を放った山上徹也被告は、妹と弁護士によるもの以外、すべての接見を拒否したまま。犯行動機として、「家庭を破壊した統一教会への恨み」がこれまでの報道で知られているくらいで、その真相は闇に包まれたままだ。
“自分の一部だけが抜きとられている”
「私は弁護士を通じてこの半年ほど、山上と連絡を取り合っているんです」
と驚きの事実を明かす鈴木氏。
「11月をはじめに、これまで5回の手紙を出しています。その中でいくつかの質問もしていますが、彼はきちんと回答をくれる。実は山上は、事件前から私の記事を全て読んでいました。事件後も私の本を読んでくれているそうです」
現在、親族や弁護士を除いて山上被告とコンタクトの取れている、おそらく唯一の人物であろう。
そのやり取りは、7月21日発売の新著『「山上徹也」とは何者だったのか』(講談社刊)に詳しいが、鈴木氏いわく、
「犯行の前、Twitterで被害を訴えていた宗教2世や統一教会被害者家族の会にメッセージを送ったことがあるのか、また、その後のやり取りについて尋ねました。山上が犯行前に外部にSOSを出していたかどうかを知ることは、彼を知る上で非常に重要なピースだからです。しかし、彼からの回答は“覚えがない”“わからない”というものでした」
また、この3月、山上被告が事件前に記していた膨大なツイートを分析し、論評した本が出版されたが、
「山上がロスジェネ世代であることが事件の背景にあると強調した本でしたが、私はその見方に違和感を抱いた。感想を聞くと、山上も“自分の一部だけが抜きとられているような気がする”と言っていたそうです」
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