甲子園未出場も、スカウト陣が高評価…急浮上が期待される高校生ドラフト候補の気になる“4人の名前”

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「関東ナンバーワン」の高校生投手

 投手では、木村優人(霞ヶ浦)と早坂響(幕張総合)がこの春一気に浮上してきた印象を受ける。木村は1学年上に赤羽蓮(現・ソフトバンク)、渡辺夏一(現・桐蔭横浜大)、山田大河(現・BCリーグ茨城)と3人の好投手がいたこともあって2年夏までは公式戦での登板機会は少なかった。秋の新チームからは不動のエースに定着。この春は150キロもマークするなど大きな成長を見せている。長いリーチを柔らかく使うことができ、バランスの良いフォームで制球力が高い。

 そして、魅力は、変化球の質の高さだ。組み立ての中心となるカットボールとスプリットはストレートと同じ軌道から鋭く変化するボールで、いずれも決め球として十分な威力がある。春の県大会は、準決勝で土浦日大に0対1で敗れたものの、3試合、17回を投げて失点はわずかに1と抜群の安定感を見せた。総合力では「高校生投手で関東ナンバーワン」との声もあり、このまま順調に行けば、上位指名も見えてくるだろう。

スカウト陣が注目する「異色の経歴」の持ち主

 一方の早坂は、昨年までは全く無名。本格的に投手の練習を始めたのは、高校2年からという「異色の経歴」の持ち主だ。昨年秋の県大会は、捕手として先発出場し、途中からリリーフでマウンドに上がり奮闘したが、チームは大敗を喫している。冬の期間に急成長を果たすと、春の地区予選、県大会では145キロを超えるストレートを連発。その後も順調にスケールアップした。練習試合でも投げる試合のほとんどで150キロ以上をマークしている。体格はそれほど大きくないが、その分まだまだスピードアップする可能性が高く、鋭く変化するスライダー、カットボールも高校生ではトップクラスのボールだ。

 数多くのプロ選手やドラフト候補を指導し、早坂が投手に転向した当初から指導に携わっているスポーツトレーナーの北川雄介氏は、以下のように評する。

「軽く投げてもスピードが出ますし、次の日に体に張りが来ないのも魅力です。スピードに関しては、大学のトップレベル(の選手たち)と比べても負けていないと思います。カットボールは、140キロ近いスピードで安定していて、130キロ台前半のスライダーと投げ分けることもできます。プロで適応するために、フォークなどの落ちるボールの習得、制球力と球質の安定などは必要になりそうですが、今のボールでも、短いイニングなら二軍では苦労するように見えません。1年目から一軍のリリーフ争いに絡める可能性もあると思います。将来的には、155キロくらいを安定して投げて、リリーフで結果を残してから先発転向という流れでいけるのではないでしょうか」
 
 高校生は短期間に急成長するケースも少なくないが、本格的に投手を始めてわずか1年で、ここまでのレベルになる投手はなかなかいないだろう。多くのスカウト陣が、幕張総合の練習試合に足を運んでおり、日に日に早坂に対する注目度は高くなっている。

 今年のドラフト戦線は、投手を中心に大学生が“大豊作”と言われているが、だからこそ、逆に高校生の候補が貴重になるという声がスカウト陣から聞こえてくる。ここで取り上げた4人以外からも、急浮上してくる選手が出てくることを期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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