地上波テレビの風潮を変えられるか…佐久間宣行の業界における重要な役割とは

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秋元康に評価されたタレントスキル

 テレビプロデューサーの佐久間宣行の勢いが止まらない。彼はもともとテレビ東京の社員であり、「ゴッドタン」など多数の人気バラエティ番組を制作していた名物テレビマンだった。

 現役のテレビ局員でありながら、テレビやラジオなどに出演する機会も多かった。局員時代からニッポン放送でラジオ番組のパーソナリティを務め、現在も「佐久間宣行のオールナイトニッポン0」という番組を持っている。

 2021年3月に独立してからは、テレビ東京以外のコンテンツ制作も手がけるようになり、Netflix、YouTubeをはじめとして、幅広い分野で活躍している。

 また、本人のタレント活動もますます活発になっていて、2023年4月に始まった「オールナイトフジコ」(フジテレビ)ではMCを務めている。この番組は、かつて放送されていた伝説の深夜番組「オールナイトフジ」の復活版である。

 この番組の総合プロデューサーを務める秋元康は、以前から佐久間のタレントとしてのスキルを高く買っていた。彼の将来性を見込んで大抜擢をしたのだろう。

テレビで「文化人の大胆なキャスティング」が減った理由

 近年のテレビでは、このくらいの知名度を持つ文化人タレントの大胆なキャスティングが少なくなっている。テレビ業界では、人前に出ることを本業としない学者や評論家などの出演者のことを「文化人」と呼ぶ慣習がある。昔に比べると、近年は文化人がバラエティ番組に出演する機会は少なくなっている。

 もちろん、文化人がテレビに出なくなっているわけではない。今のテレビでは、時事ネタを扱う情報番組の枠が大きくなっていて、その中でコメンテーターとして出演している文化人は大勢いる。また、インテリ系の文化人がクイズ番組などの教養系のバラエティ番組に出ることはそれなりにある。

 しかし、それ以外の一般的なバラエティ番組では、文化人を見かける機会が年々少なくなっている。特に、ゴールデン・プライム番組のMCを務めるほどの立場にまで上り詰めたのは、マツコ・デラックス、池上彰、林修など数えるほどしかいない。なぜ文化人のバラエティ出演が減っているのだろうか。

 その最大の理由は、番組の制作費がどんどん削られていることだ。かつては、1つの番組に多くのタレントを起用することができた。その中で「文化人枠」を設けて、文化人を出演させることができた。

 しかし、今のテレビにはそんな余裕がないため、一番組あたりの出演者数が最小限になっている。その中では、仕切りができたりコメントが面白かったりして器用に立ち回れるタレントが優先され、文化人が起用されにくくなっている。

 それと関連して、芸人の立場が強くなりすぎたという現状も挙げられる。今のテレビでは、司会者からコメンテーターまで、あらゆるポジションに芸人が入り込んでいる。プロの芸人はしゃべりだけで笑いを生み出す能力があり、それだけでテレビの世界では重宝される存在である。

 その上、それぞれの芸人が得意分野を持っていて、最新家電の解説をする、おすすめの本を紹介する、キャンプの魅力を語る、といったパフォーマンスをすることができる。たとえば、芸人でありながら作家として芥川賞を受賞した又吉直樹などは、典型的な「文化人芸人」である。いわば、昔なら文化人がやっていたような仕事を今は芸人がやっているのだ。

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