公安部警察官が「まあ、捏造ですね」「捜査員の欲でそうなった」前代未聞の証人尋問で明らかになった不正捜査の数々【大川原化工機事件】
2020年3月、警視庁公安部は機械メーカー「大川原化工機」(本社・神奈川県横浜市)の大川原正明社長ら幹部3人を「武器に転用できる噴霧乾燥機を中国に不正輸出した」との外国為替及び外国貿易法(外為法)違反容疑で逮捕した(後に韓国向けも追加)。だが、東京地検は初公判の4日前に突然、起訴を取り消し、東京地裁は公訴を棄却、刑事裁判は終了した。違法な逮捕や長期勾留などによって損害を受けたとして、大川原社長らは東京都と国に賠償を求めて提訴。その裁判の中で、警察官から驚きの証言が上がった。【粟野仁雄/ジャーナリスト】
【写真】生物兵器の製造に転用できるとされた「噴霧乾燥機(スプレードライヤー)」
総額約5億6000万円の損害賠償請求
逮捕後、容疑を一切、認めなかった大川原社長と島田順司元取締役の勾留は21年2月まで11カ月続いた。勾留中に悪性の腫瘍があると判明された相嶋静夫元顧問の勾留は停止されたが、治療が手遅れとなり、同年2月に死去した。さらに、逮捕報道が出たことで銀行は取引をストップ、新規の取引もできず、年商30億円あった同社の売上は4割も落ち、倒産危機に瀕した。
21年9月、大川原社長や相嶋元顧問の遺族らは「逮捕や起訴は違法」だと訴え、東京都(警視庁)と国(東京地検)に総額5億6500万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁(桃崎剛裁判長)に起こした。
今年1月から始まった裁判では、警視庁の関係者は捜査の正当性を主張することに終始。しかし、6月30日、警視庁公安部に所属していた4人の警察官が証人尋問された口頭弁論で「仰天事案」が起きた。同社の顧問弁護士で代理人の高田剛弁護士(和田倉門法律事務所)が法廷でのやり取りなどを明かしてくれた。
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