マイナ事業で荒稼ぎするパソナと竹中平蔵氏 30年前の写真で「デタラメカード」が発行される問題も…役所の担当者は「上司が急かすから」
既得権益が生まれ…
また、こうした組織の問題は、司令塔であるデジタル庁にとどまらない。
「J-LIS(リス)」(地方公共団体情報システム機構)という団体がある。住基ネットを運営する機構であるが、現在はマイナカードの発行事業も一手に担っている。いわば、マイナ事業の“中核”組織だ。
この団体もやはり民間企業からの出向者を少なからぬ割合で受け入れているが、
「こちらについても、国のデジタル事業において指摘されてきた、ベンダー・ロックインの陥穽にはまり込んでいる疑いがあります」
と言うのは、前出の磯山氏である。ベンダー・ロックインとは聞き慣れない言葉であるが、
「要は、デジタル業務を、これまで受注実績の多かったNTTなど大手のITゼネコンが受注する。そしてその後の運用、保守などを行うことによって、事業に特定のIT事業者、つまりベンダーしか携わることができなくなってしまう現象です。すると既得権益が生まれ、競争が働きませんから、発注費が高止まりし、システムの進化も起こりません」
この状態が、J-LIS内でも発生してしまっているというのだ。
高い随意契約の割合
実際、J-LISがHPで公開している過去3年分の契約について分析してみると、マイナ事業を主に担当する「個人番号センター」における随意契約の割合は、
〇令和4年度
・件数ベース=60%
・金額ベース=93%
〇令和3年度
・件数ベース=73%
・金額ベース=49%
〇令和2年度
・件数ベース=93%
・金額ベース=99%
このようにいずれも高いことが見て取れる。
さらに、デジタル関連で大手ベンダーといわれるのは、NTT、NEC、日立製作所、富士通とその関連会社であるが、この3年の随契全体のうち、これらの企業が占める割合を調べてみると、
・件数ベース=78%
・金額ベース=92%
と、これまた極めて高い割合。見事なベンダー・ロックイン状態を表しているのだ。
「背景には、デジタル庁関係の組織に大手ベンダーの関係者が多数入っているという事情があります」
と磯山氏が言う。
「彼らは、どうしても現在の所属より、親元とつながったままになる。組織に入っても、古巣との契約を優先し、こうした状態が固定化されてしまうんです。そもそもベンダー・ロックインを打破するために、役所の縦割りを排し、組織横断型のデジタル庁を作ったのに、関係先でそれが固定化されているのは実に由々しき問題ですよね」
J-LISがマイナカード発行にかけている事業予算は令和元年以降、多い年で780億円、少ない年でも270億円ほど。もちろん原資は公費だ。多額の税金を投入した果てに、大手ベンダーが肥え太る構図があるのでは、誰のためのマイナカードかという話にもなってくるのだ。
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