「日本から親鶏の1割がいなくなった」 鳥インフルエンザで卵が高騰、値段はいつ下がる?

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 物価の優等生「卵」の値段がなかなか下がらない。JA全農たまごによると、標準的なMサイズで1キロあたり350円(5月、東京地区)。スーパーで売られている10個入りのパックにすると200円台を下ることはない。ここ30年で最も高い水準だ。インフレで何でも値上がりしているとはいえ、卵が高いとやはり落ち着かない。そもそも鶏卵を生産するためのコストが高くなっていると言うのは、さる鶏卵生産業者だ。

「鶏卵はほとんど国内で生産されていますが、親鶏に与える飼料の原料は輸入に頼っており、国際市況に大きく影響されます。飼料会社によって配分が違いますが、4~5割がトウモロコシ。トウモロコシは、ロシアによるウクライナ侵攻の影響もあって世界的に価格が上昇しているのです」

 たしかに穀物の国際取引所であるCBOT(シカゴ商品取引所)の相場をみると、トウモロコシ価格は高止まりしたまま。加えて円安ドル高が拍車をかけているのは言うまでもない。

誰が“犯人”?

 それならば、円安が収まり、ウクライナ情勢が落ち着くのを待つしかないのか。

「いえ、卵の値段はそれだけで決まるものではないのです。むしろ別の原因が価格を左右することも少なくありません」

 とは、一般社団法人・日本養鶏協会の担当者。

「まず、鶏卵の卸価格というのは、豊洲のマグロの競りのようなもので、売り手と買い手の需給バランスで決まるのです。ですから、飼料が高くても卵がたくさん生産されると安くなってしまうこともある。昨今の飼料価格の高騰は生産者さんにとって重い負担となりますが、それがすぐ卵の値段に反映されるわけではありません」

 それならば、どこの誰が“犯人”なのかと聞くと、

「昨年来、日本各地で発生している鳥インフルエンザが卵の価格を押し上げているのは間違いありません。ご存じかもしれませんが、鳥インフルエンザは、千羽いる鶏舎で、たった1羽が感染したとしても全て殺処分となります。今シーズンはこれまで国内で約1700万羽以上が処分されているので、日本から親鶏の1割近くがいなくなった計算になります」(同)

 結果、供給が絞られ値段が高騰したというわけだが、協会の担当者によると今後は値下がりするはず、とのこと。コロナ禍ならぬインフル禍が過ぎて、こちらも落ち着きをとり戻してもらいたいものだ。

週刊新潮 2023年6月29日号掲載

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