「スラムダンク」の聖地を抱える「江ノ島電鉄」が大混雑でも減便しなくてはならない深い事情
週末や行楽シーズンくらいは…
鎌倉駅行きの場合、ダイヤ改正後の列車は従来3分の湘南海岸公園-江ノ島間と従来5分の七里ケ浜-稲村ケ崎間とで2分ずつ、従来2分の稲村ケ崎-極楽時間で1分それぞれ延びた。以上を合わせると5分と増えすぎで、代わりに従来4分の鎌倉高校前-七里ケ浜間と従来2分の和田塚-鎌倉間とで1分ずつ短くなっている。
藤沢駅行きの場合、従来1分の和田塚-由比ケ浜間で1分、ともに従来4分の極楽寺-稲村ケ崎間と腰越-江ノ島間とで2分ずつの計5分延びた。こちらもそのままでは延びすぎなのでともに従来2分の鎌倉-和田塚間と石上-藤沢間とで1分ずつ短くなって3分の増加に収められている。
ダイヤ改正前、藤沢・鎌倉両駅とも到着した列車が折り返しに要する時間は最短2分であった。特に12分間隔で運転されていた時間帯はすべての列車がわずか2分で忙しく出発していたという。これではいくら何でも余裕がない。という次第で最短の折り返し時間は3分延びて5分となった。
定時運行を確保したうえで週末や行楽シーズンくらいは12分間隔で列車を走らせればいいではないか――。鎌倉駅での大混雑を前に誰もが思うことであろう。江ノ島電鉄はニュースリリースで、運転時間の増加や折り返し時間の延長と12分間隔での運行とは両立できないかのような記し方をしている。となると、安全運転につながる定時運行確保のために大混雑は致し方ないと納得すべきかもしれない。
12分間隔での運行は可能だが
江ノ島電鉄の言い分を否定するようで申し訳ないのだが、実を言うと藤沢-鎌倉間の運転時間を37分に増やし、藤沢・鎌倉両駅での折り返し時間を5分に延ばしたうえで12分間隔での運行を続けることは理論上可能だ。というよりも、12分間隔は単に単線区間での行き違い場所の位置と数とによってもたらされる制限であり、運転時間の増加には多少は影響されるものの、終着駅での折り返し時間の延長とは関係ない。
そうは言っても、定時運行の確保と12分間隔とを両立できない理由は別に存在する。もしもどちらも成り立たせようとすると車両や乗務員が足りなくなるのだ。
具体的にどのくらい足りないのか。車両を例に算出してみよう。計算式が登場するので、結論だけ読んでいただいて構わない。
列車のダイヤを作成するうえで重要なのは、運用本数と言って車両や乗務員の数を決める基本的な数値だ。簡易な求め方を挙げると、片方向分の運用本数は運転時間に折り返し時間を含めた数値(分)を運転間隔(分)で割るとよい。
江ノ島電鉄線ではダイヤ改正前、藤沢駅から鎌倉駅に向かう列車は34分で運転され、折り返し時間は2分であり、運転間隔は12分であった。したがって36÷12から3で、運用本数は3となる。同様に鎌倉駅から藤沢駅に向かう列車も同様の条件であったのでやはり運用本数は3で、合わせて6だ。
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