「スラムダンク」の聖地を抱える「江ノ島電鉄」が大混雑でも減便しなくてはならない深い事情
列車の増発も車両の増結も難しい
つまり1日平均の混雑率は56パーセントなのでそう問題はない。輸送需要が急激に増加する時間帯だけ列車を増発したり、1本の列車に連結する車両を増やす「増結」を行ったりすれば事足りる。
ところが江ノ島電鉄線の場合、列車の増発も車両の増結も難しい。
全線が単線の江ノ島電鉄線では行き違い可能な駅または施設が鵠沼駅、江ノ島駅、峰ケ原信号場(鎌倉高校前-七里ケ浜間に設置)、稲村ケ崎駅、長谷駅の5カ所にしかなく、運転間隔を現在の14分間隔よりも短くすることは困難なのだ。
かといって全線を複線にしたり、行き違い可能な駅や施設を増やしたりすることも敷地が狭いので実現は無理であろう。似たような理由で車両の増結も駅のホームの長さを延ばすことができず実現しそうにない。
実を言うと、今年2023年の3月17日まで、江ノ島電鉄線の列車は早朝、深夜を除いて12分間隔で運転されていた。しかし、3月18日にダイヤ改正を実施して14分間隔に改められている。同線で最も利用者数の多い和田塚-鎌倉間の列車の本数は2015年度と比べて変化し、鎌倉駅方面、和田塚駅方面ともに74本ずつの計148本と、従来と比較すると鎌倉駅方面は11本、和田塚駅方面は12本の計23本もの列車が減少した。
一体なぜ?
週末や行楽シーズンの混雑は続いているのに一体なぜと思うであろう。江ノ島電鉄のニュースリリース(https://www.enoden.co.jp/train-news/17695/)によると、ダイヤ改正の目的として定時運行を確保するため、そして旅客の利用動向を踏まえたものだそうだ。
定時運行を確保する目的での変更点は2点つある。一つは藤沢-鎌倉間での運転時間を増やした点、もう一つは藤沢、鎌倉両駅での折り返しに要する時間の延長だ。
江ノ島電鉄線の列車はこれまで藤沢-鎌倉間を34分で走破していた。しかし、江ノ島駅と腰越(こしごえ)駅との間では一般道路に線路が敷かれた区間があり、週末などは道路渋滞などで遅れがちであったそうだ。また、一部の駅では乗り降りに時間を要して定刻通りの運転が難しかったという。以上に鑑みて江ノ島電鉄はダイヤ改正を機に藤沢-鎌倉間の運転時間を3分延ばして37分としたのである。
ダイヤ改正前後とも存在する藤沢・鎌倉両駅午前11時12分発の列車で、区間ごとの運転時間がどのように変わったか比べてみよう。
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