闇市、匂いガラス、虎ノ門で虫捕り… 1945年生まれの作家・松山巖が追憶する戦後の東京

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愛し合っている男女を懐中電灯で照らす遊び

 日比谷公園にはよく出かけた。池から小さな亀を捕ってきて、壺に砂を入れて育てたが、冬眠したのが気になり、外へ出して死なせてしまったのは、寂しい思い出だ。小学校の同級生は夜、日比谷公園で愛し合っている男女を、「少年探偵団」と称して懐中電灯で照らす遊びをしたらしい。公園の係の人に見つかり、校長先生から怒られたが、私はとてもうらやましかった。

 小学校の高学年になると、銀座のデパートへ何人かと行っては、エレベーターに乗り、エレベーターガールを冷やかした。デパートの屋上で遊んだ。銀座のビルの間にある路地で駆けっこをした。

 こうして時代は戦後になった。

松山 巖(まつやま・いわお)
1945年東京生まれ。作家・評論家。『乱歩と東京』で日本推理作家協会賞を受賞、その他の作品に『うわさの遠近法』(サントリー学芸賞)『群衆』(読売文学賞)など。

デイリー新潮編集部

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