闇市、匂いガラス、虎ノ門で虫捕り… 1945年生まれの作家・松山巖が追憶する戦後の東京

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虎ノ門は「バッタやトンボを捕る場所」

『乱歩と東京』で日本推理作家協会賞、その他の作品でサントリー学芸賞や読売文学賞など数多くの賞を受賞している、作家で評論家の松山巖さん。1945年、終戦のひと月前に生まれた彼が幼き日に見つめた、戦火をくぐり抜けた先の東京の風景とは。

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 私は1945年7月11日に生まれた。それから1カ月後の8月15日に、天皇は敗戦を宣言した。生まれたのは世田谷の経堂で、実は戦火を避け、母の妹夫婦の暮らす家で私は産湯をつかった。経堂が疎開先だったと説明すると驚く人は多いが、当時の世田谷は田畑が広がる土地だったらしい。...

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