流行「乗れるスーツケース」の危険性を専門家が指摘 転倒、衝突のリスク大もメーカーは〈補償しかねます〉
転倒の危険性
2022年に発売した乗れるスーツケース「GeeRidecase(ジーライドケース)」を販売する株式会社Glotureの商品紹介によると、価格はおよそ10万円。「スクーターのように乗れる、夢のようなスーツケース」という売り文句だ。
ハンドルの右ボタンで「進行」、左ボタンで「停止」と操作は非常にシンプルで、最大時速は10kmという。
「人が歩く時は時速4.7kmくらいですから、このスーツケースの時速10kmというのは早歩きや子どもが走るのと同じくらいです。ものすごくスピードが出るというわけではありませんが、歩いている人を追い抜かすくらいですから、周りの人を避けるなど、注意を払う必要があります」
一見すると、普通のスーツケースに見えるが、それに比べるとタイヤは少し大きいようだ。前に1つ、後ろに2つの計3つの車輪がついている。
「タイヤのサイズが非常に小さいので、段差や石などの小さな障害物でも乗り越えられず、転倒する危険性があります。また、重心が高いのでバランスを取るのが難しそうだと思いました。スーツケースにまたがる形になるので仕方がないですが、安全性の面で考えれば、スーツケースを横向きにして、座る部分を広くし、重心を低くした方がいいでしょう」
商品のHPには、大人が子どもを抱える形でスーツケースにまたがり、2人乗りをしている写真まであるが、上西さんは「転倒しやすく危険です。子ども1人が遊びで乗るにしても危ないです」と指摘する。
〈一切補償しかねます〉
乗れるスーツケースに乗る人を見かけた際は、周りの人も注意が必要だ。
「スピードを上げた状態では急に止まったり、曲がったりすることが難しそうです。歩行者に後ろからぶつかったり、避けきれずに正面衝突したりする可能性もあるでしょう」
さらに、販売サイトには、〈走行は十分に広く、周囲に人や障害物がない状況でご利用下さい。当ストアでは走行に伴い生じた事故・トラブルにつきましては一切補償しかねます〉といった注意書きもある。
「気軽な気持ちで乗ってみて、転倒や衝突など大きな事故に繋がる可能性もあり、安全運転を啓蒙する立場からはお勧めできません。一方で、新しく売れる乗り物を作りたいというメーカー側の工夫も分からないではありません。電動キックボードが普及したのも、ヘルメットの着用が努力義務になり、安全性はもとよりスタイリッシュに気軽に乗れるようになったことが大きいと思います。気軽に乗れる電動スーツケースも、新しい乗り物なので一時的に話題になっているようです」