「マイナはデジタル弱者をはじき出す制度」 オンライン機器導入で「廃業」の病院も

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組織として意味のない役職

 経済ジャーナリストの荻原博子氏が解説する。

「今までの保険証は2年おきに自動更新され、保険組合から自宅などに送られてきたので、手間はかかりませんでした。しかし、マイナンバーカードは少なくとも5年に1回は更新のために窓口に行かないといけません。介護を必要としている方はどうやって取りに行くのでしょうか。窓口に行かず、保険証の期限が切れてしまう国民が続出する事態も考えられます。そうすれば、国民皆保険制度から抜け落ちる人が出てきかねません。まさに、デジタル弱者をはじき出す制度です」

 なぜ、かくもマイナカードはトラブルが絶えないのか。

 そもそも、所管するデジタル庁の「組織的問題」が、かねて指摘されていた。河野大臣も6月9日の会見で、「普通の霞が関の役所とは組織体制が違う。それも(トラブルの)原因の一つだろう」と語っている。

「組織的問題の一つはCxOの存在です」

 とは、さる官邸スタッフ。デジタル庁が21年に発足した際、当時の平井卓也大臣が“目玉人事”として掲げたのが、このCxOだった。デジタル庁は縦割り打破を目指し、プロジェクトごとにチームを組む態勢で、業務を進めてきた。CxOはそのプロジェクトに関わる、雑誌でいうところの「編集長」のような存在。現在、グリー取締役の藤本真樹(まさき)氏がCTO(Chief Technology Officer=最高技術責任者)を務めるなど、5名のCxOがデジタル庁幹部として名を連ねている。

「このCxOが皆、民間企業などとの兼任者で名誉職のような存在になってしまっているのです。常勤ではないので、情報共有もうまくいっていないと聞きます。そもそも民間企業の役職者を政府の要職に招くことについては、菅義偉政権時代から“組織として意味のない役職”“情報漏洩の恐れがある”と官邸幹部に指摘されていたんです」(同)

官民混成部隊

 もう一つの問題として「官民混成部隊」であることが挙げられる。現在のデジタル庁の職員約900名のうち、民間からの登用は3分の1ほど。残りの3分の2が官僚ということになる。

 デジタル庁関係者が言う。

「官と民の文化が違いすぎて衝突することが多いんです。デジタル庁は席が決まっていないフリーアドレスなのですが、顔を突き合わせたい官の管理職同士が一定期間、近い席で仕事をすることを提案すると、民から“時代に逆行している”とクレームが入る。そういうくだらない争いが日々繰り広げられています」

 冒頭の村井氏はかような状況について、以下のように述べる。

「いまは民間人が上司でも、官僚から“一緒にやっていこうぜ”みたいな話がようやく聞こえてくるようになった気がします。現場は多少うまくいっていないところもあると思います。しかし、アメリカではリボルビングドア(官民の人材交流)が活発で、民間から役所に行く人がたくさんいます。民から官に行くと給料が半分になることもあるのに、彼らは“面白いから”と官に行く。日本でもそうすべきだと思いますし、新潮社の人だって霞が関に行って戻ってくればいいんですよ」

 だが、デジタル庁を統べる河野大臣は別の問題にも頭を悩ませている。最側近議員の不祥事だ。

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