「中野サンプラザ」本日閉館 50年前、オープニング記念公演に行った男性の証言「あれほど驚いた演奏会はありません」

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最初のステージに立ったのは、あの楽団

「窓から見ていると、次第に巨大な建物が出来上がっていくので驚きました。当時、中野駅周辺の大きな建物といえば、丸井中野本店と、新築なった中野区役所くらいでしたから。明治生まれの祖母が、『あんなに大きくして、なにをやるのかねえ』と呆然と見上げていたのが忘れられません」

 正式オープンは1973年6月1日(金)。午後3時から1時間ほどの「開館記念式典」が挙行された。鼓笛隊が中野駅周辺をパレードし、たいへんな騒ぎとなった。

「父親が商店街の役員をやっていた関係で、この式典に行ってました。『偉い人の挨拶ばかりだったけど、尾崎紀世彦が出てきたぞ』と興奮してました」

 尾崎紀世彦(2012年没) は1971年に「また逢う日まで」で日本レコード大賞を受賞した人気歌手だった。この日は、ほかに童謡歌手の大庭照子も来場して歌っている。

 そして、翌6月2日(土)の「開館記念演奏会」からが正式稼働である。果たしてこの日、サンプラザのステージに立ったアーティストは、誰だったか。

 なんとそれは「NHK交響楽団」だった。

「まさか中野駅前にN響が来るとは思いませんでした。渋谷NHKホールの開館が同年6月20日なので、サンプラザ開館はそれより18日早かったんです。つまりN響は、本拠地となる新生NHKホールより前に、新生サンプラザの柿落としで演奏していたのです」(森重さん)

 この開館記念演奏会は、チケット発売なし。中野区民は抽選で無料招待だった。

「私もクラシックを聴きかじり始めていたので、鼻息荒くハガキで応募しました。同級生も何人か応募していました。しかし誰も当たらない……かと思いきや、学校で一人だけ当選したやつがいたんです」

 それが、岡崎博さん(仮名、64歳)。現在、東京都内の公立中学校に非常勤で勤務している数学の先生だ。今回、森重さんの紹介で、岡崎さんに思い出話をうかがった。

「たしかに当たって行きました。てっきりハガキを出せば誰でも行けるんだと思っていたら、抽選だったんです。でもすいません 、何の曲を聴いたのか、まったく覚えていないんです」

 岡崎さん、もっと思い出して!

「う~ん……ホールがやたらと広かったのには驚きました。それまで中野公会堂しか知りませんでしたから。あと、天井から巨大な丸い物体(スピーカー)が数個ぶら下がっていたことは覚えています。あんな物が落ちてきた日にゃあ、恐ろしいことになると思ったもんです。あと、ピアノを、いまは亡き中村紘子が弾いていましたね。当時、美人ピアニストで売り出し中でしたから、これは忘れられません」

 この日の演奏会について、残っている資料を基に、中野サンプラザに確認してもらった。たしかに中村さんが出演していた。

【開館記念特別演奏会】
秋山和慶:指揮、NHK交響楽団
〈曲目〉
1)組曲《道化師》/カバレフスキー作曲
2)パガニーニの主題による狂詩曲 作品43/ラフマニノフ作曲(ピアノ:中村紘子)
3)イタリア奇想曲 作品45/チャイコフスキー作曲
4)交響曲第5番 ホ短調 作品64/チャイコフスキー作曲

 特に祝典曲はないようだが、これはかなり長時間のコンサートである。

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