瀕死の事故、同僚との確執から復活した、ツール・ド・フランス王者「レモン」の壮絶な半生(小林信也)
ツール・ド・フランスを彩る英雄の中で、深く私の印象に刻まれているのはグレッグ・レモン(アメリカ)だ。
最初に日本のテレビでツール・ド・フランスが本格的に紹介されたのは1985年のNHKだ。私も放送を見た。最終ステージのフィナーレに激しい衝撃を受けた。自転車の大集団がシャンゼリゼ通りのゴールに突進する。固唾(かたず)をのんで見つめる中、集団が真ん中から八の字に割れ、扇形に広がった中央から一人の選手が飛び出して来た。最終ステージを制したスプリンターだった。...