小学生が4時起き激務…近鉄の“ガチすぎる”駅長体験の狙いは

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各事業者に余裕はないが…

 鉄道事業者はイベントのほかにも、さまざまな手法で鉄道業への理解を深めてもらおうと努めてきた。筆者は地方行政や鉄道事業を主に取材するライターだが、積極的に社会科見学で小学生を受け入れる傾向は、特に市営地下鉄や市電といった公営の鉄道事業者に強かった。それはコロナ禍で一変し、鉄道事業者が子供たちに鉄道業を身近に感じさせる機会は減った。

 ようやくコロナ禍は収束したが、今度は鉄道事業者に収益を気にせずに企画を打ち出せるほどの余裕がなくなっている。

 鉄道を身近に感じさせるという点においては、これまでの1日駅員(駅長)体験よりも宿泊を伴う体験ツアーの方が高い効果を発揮することは間違いないだろう。

 今回、近鉄が実施する宿泊を伴う1日駅員(駅長)体験は宿泊設備の有無などが催行条件となる。そのほかにもクリアしなければならない課題があり、そのために他社は容易に模倣できないかもしれない。

 それでも鉄道各社が工夫を凝らした取り組みを打ち出すことで、それまで鉄道と無縁だった人たちにも鉄道を身近に感じさせることができる。それは短期的には鉄道事業の収益として結びつかなくても、長期的に見れば鉄道需要の創出につながる。

 今、鉄道各社はそんな長期的な取り組みができるほどの余裕はないのかもしれない。しかし、目先の利益だけ追ってもジリ貧になることは見えている。近鉄が実施する斬新な取り組みが他社からも打ち出されることを期待したい。

小川裕夫/フリーランスライター

デイリー新潮編集部

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