猿之助事件のカギを握る母と子の愛憎劇 「未成年強制性交」の捜査はどうなる?
捜査が難航した理由
発見時、三人ともパジャマ姿で口から泡を吹いており、延子さんはすでに死後硬直が始まっていた。段四郎も搬送先の病院でまもなく死亡が確認された。
「猿之助が倒れていた場所では遺書とみられるものも見つかっています。壁に立てかけられたスケッチ用のキャンバスに第一発見者となった男性マネージャーに対する〈愛する〇〇 次の世で会おうね〉というメッセージや、この男性を〈養子にする〉〈財産の相続人にする〉といった内容が書き留められていたのです」(同)
一見すると、猿之助の性の乱れに端を発した一家心中だが、この事件には不可解な点も多く、捜査は難航することに。
不可解な点の一つ目は、三人が服用したとされるフルニトラゼパムについてだ。人間がこの薬で死に至るには途方もない錠数を服用する必要があり、持病があるなどの事情がない限り、この薬だけで自殺を図るのは困難とされている。
二点目は、猿之助が供述している“捨てたビニール袋”の存在である。ビニール袋を両親に被せて自殺を手助けしたとされるものの、すでにゴミとして回収されてしまい、警視庁も押収できなかったのだ。
問題となる父・段四郎
「両親が本当に自殺なのであれば、彼に科せられるのはせいぜい自殺ほう助。一方、猿之助が両親の同意のもと彼らを手にかけていたのなら同意殺人が、また、両親に自殺の意思や死の同意がなかったのであれば殺人罪が成立する可能性もあった。一般的に自殺ほう助の場合、証拠を現場に残しておくほうが有利とされますが、猿之助は重要な証拠となりうるビニール袋を廃棄したわけで、警視庁は彼の供述をうのみにするわけにいかず、慎重の上にも慎重を期すこととなったのです」(同)
自殺ほう助は、あくまで自殺を決意している人を手助けした場合に成立する犯罪で、法定刑も「6月以上7年以下の懲役または禁錮」と、最高刑が「死刑」の殺人に比べてかなり低い。
「今回、警視庁は母親に対する自殺ほう助で逮捕状を請求しましたが、正常な判断能力があった母親に大量の錠剤を無理やり飲ませることは想定しづらい。同意の上、向精神薬を服薬したとみるのが合理的であり、彼女には自殺の意図があったと認定したわけです」(同)
一方、問題となるのは父・段四郎である。
「段四郎さんは肝臓がんのステージ4で要介護4の寝たきり状態。さらに意思疎通も困難な状態で、自殺を決意できるだけの判断能力があったのかが争点でした」(同)
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