ロシアはもはや近代国家ではない…プリゴジン反乱ではっきりしたプーチン政権の正体
戦犯はプーチン大統領
日露戦争で日本に完敗したニコライ2世(1868~1918)は“最後のロシア皇帝”として知られている。失政や圧政でロシア革命を招き、帝国を崩壊させた。そのため“無能”という辛辣なレッテルを貼られることも珍しくない。
そんなニコライ2世ですら軍隊は一本化していた。ということは、プーチン大統領のガバナンス(統治)能力はそれ以下ということになる。
「プーチン政権は2000年から08年、そして12年から現在まで続いています。合計21年の長期政権ですが、ワグネルの肥大化を許したという時点で、権力が弱体化しているのは明らかでしょう。極端なことを言えば、軍隊は戦争が仕事です。2つの軍隊が併存すれば、いつか互いに攻撃を仕掛けるのは理の必然と言えます。だからこそ近代国家は自国の軍隊は常備軍として一本化したのです。プーチンによってロシアは近代国家たる条件を喪失しました。彼が国のリーダーとして失格なのは言うまでもありません」(同・佐瀨氏)
重要なのは、ワグネルが民間軍事会社のレベルを超えていたということだ。反乱の際、ワグネルが戦車や対空ミサイルを保有していることが明らかになった。実際にロシア空軍のヘリや軍用機を撃墜している。
こんな兵器を整備できる資金がワグネルにあるはずもなく、全てはロシア軍が与えたのだ。つまり、正規軍に匹敵する重武装をワグネルに許可し、反乱の原因を作った“戦犯”は、まさにプーチン大統領だと言える。
「世界が歪んで見える」
プーチン大統領は1952年、ソ連時代のレニングラード(現・サンクトペテルブルク)に生まれた。中学生の時にスパイに憧れ、14歳でKGBを訪問、就職するにはどうしたらいいか質問したというエピソードが残っている。
レニングラード大学では法律を学び、4年生の時にKGBのリクルートを受けた。85年に東ドイツのドレスデンに派遣され、西側諸国の情報を集める諜報活動に従事した。
「諜報活動と言えば聞こえはいいですが、KGBのやっていたことは全て“悪巧み”です。そしてプーチン大統領はその先兵でした。KGBを辞めてサンクトペテルブルクの副市長などを歴任して現在に至りますが、確固たる国家観など考えたことすらないのは、彼の統治下で建設的な政策が何も採られなかったことからも明らかでしょう。いわば“スパイの目”で国内外の情勢を判断しますから、世界が歪んで見えているのです」(同・佐瀨氏)
2014年、ウクライナでユーロ・マイダン革命が発生し、当時の親ロ政権が市民の抗議によって退陣を余儀なくされた。
ロシアの視点から見れば、隣国のウクライナが“親西側化”してしまうのは由々しき事態だったに違いない。EU(欧州連合)やNATO(北大西洋条約機構)に加盟されてしまうと、“緩衝地帯”を失うことになる。ロシアが西側諸国と国境を接して対峙するのは、安全保障上の脅威であることは事実だろう。
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