「京大の人と喋ってみたかったから」 作家・佐川恭一が語る就活で出会った「和製リア・ディゾン」との甘酸っぱい思い出
「キモいのではないか」と連絡先を聞くのをちゅうちょ
だが、私はその一歩を踏み出すことができなかった。彼女は面談の時から鬼のようにコミュ力が高かったし、インキャとの会話を盛り上げることぐらい朝飯前で、それにまんまと乗っかって前のめりになるのはキモいのではないか、とちゅうちょしたのだ。連絡先を聞いた途端に冷たい態度を取られ、大恥をかく展開も頭をよぎった。
私は結局そのままリア・ディゾンと別れたのだが、直後からずっと後悔していた。恥を恐れていては何も始まらないのだ。私は「就活で彼女に再び会うこともあるかもしれない、次に会ったら必ず連絡先を聞くぞ」と思っていたが、ついにその機会は訪れなかった。私は今でも、あの淀屋橋から大阪駅までの道のりを夢のように覚えている。もしこれを読んで、「私があの時のリア・ディゾンです」という方がいれば、ぜひご連絡ください。
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