人工甘味料で「脳卒中」「糖尿病」リスク、WHOが警鐘 トクホ食品にも要注意
透明性の高いガイドライン
WHOの今回の勧告について専門家はどうみるか。
「WHOは、これまでもガイドラインで砂糖の摂取量を制限するように勧告してきました。その上で、今回のガイドラインでは人工か天然かを問わず、全ての甘味料の摂取を減らすよう求めています」
そう話すのは、ハーバード大学などで研究してきた医師の大西睦子氏。
「私が重要だと考える点は、WHOが人工甘味料の長期使用は体脂肪を減らす効果はなく、健康リスクを引き起こす可能性がある、として糖尿病などの非感染性疾患のリスク軽減や、体重管理を目的とした人工甘味料の使用に対して警告したことです。加えて、人工甘味料を継続的に摂取すると2型糖尿病、心血管疾患、成人の死亡のリスクを高める可能性があると指摘したことも重要です」
〈脳卒中(19%増)〉〈高血圧(13%増)〉などと、勧告の中で細かい数字を挙げたことについても、
「大きな意味があります。これらの数字は質の高い複数の論文を総合的に分析した結果として出てきたものです」
と、大西氏。
「WHOのガイドラインが作成された経緯を見ると、『外部専門家によるレビューグループ』『系統的レビューの方法論と主題の両方に精通したチーム』と書いてあります。つまり、複数の信頼に足る専門家たちによって人工甘味料に関する科学文献がレビューされている、ということです。文献の詳細も公表されており、透明性の高いガイドラインになっています」
血糖コントロールが乱れる
本誌では昨年6月、人工甘味料とがんに関する、フランスのパリ第13大学の研究結果について報じた。それによると、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロースの摂取量が多い人ががんになるリスクは、非摂取者に比べて13%増加。アスパルテームのみに限ると、摂取量の多い人が乳がんになるリスクは22%上昇、大腸がんや肝臓がんなどの「肥満関連がん」になるリスクは15%上がっていた。
今回のWHOの指針では、糖尿病や脳卒中、高血圧などのリスクが上昇することが指摘されているわけだが、
「それらは全て人工甘味料によって引き起こされる“血糖コントロールの混乱”に関係がある病気なのです」
そう語るのは、加工食品ジャーナリストの中戸川貢氏である。
「人工甘味料を口にすると糖が体内に入ってきたと脳が勘違いし、血糖値を下げるホルモンであるインシュリンを分泌する指令を出します。しかし、実際には血糖値は上がっていない。すると脳が『思ったより血糖値を下げすぎてしまった』と考え、血糖コントロールが乱れるのです」
その状態が長く続くと、
「砂糖を使った菓子など本当に血糖値が上がるものを食べた時でもインシュリンの分泌が悪くなってしまう。その結果、高血糖につながり、糖尿病や心血管系疾患などさまざまな病気になる可能性があるのです」(同)
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