「戦争の長期化に拍車」「エリートの離反と愛国勢力の反発」 ワグネル反乱は何を示したのか
「プーチン体制の終わりの始まり」
元時事通信モスクワ支局長で拓殖大学特任教授の名越健郎氏は、こんな見解。
「今回の騒乱はプーチン体制の終わりの始まりを意味するのではないか。造反の収拾に当たったのは、ニコライ・パトルシェフ安保会議書記やルカシェンコ大統領らで、プーチン大統領は国民向け演説を行うだけだった。エリートの離反やプリゴジン氏を支持する愛国勢力の反発を招く可能性がある。内乱の瀬戸際になったことで、国民にも大統領の弱さを印象付ける形になった。危機管理能力に疑問を持つ人も多いでしょう。これからロシアは9月に統一地方選、来年3月には大統領選が予定されていて“選挙の季節”に入ります。政権は締め付けを強めるものの、いい方向に作用しないのは明らかです。あと6年、任期を任せられるのかといった疑いが、エリート層を中心に沸き起こってくる可能性は大いにあります」
プーチン政権が弱体化すれば、はたして反転攻勢に出たウクライナにとっては、有利な戦況となるのか。
「戦争の長期化に拍車」
再び兵頭氏に聞くと、
「国民に対する政権の求心力が低下すればするほど、戦争では敵に譲歩や妥協しづらくなりますから、強硬手段を貫くことで力を誇示しようとするでしょう。今回の反乱で戦争の長期化に拍車がかかったと思います。戦力的な観点に立っても、これまでバフムト制圧など攻める側にロシア軍が立てば、ワグネルのような突破力のある部隊の影響力は強かったのですが、今のロシア軍は攻守逆転で守る側に立たされています。短期的な軍事作戦においては、ワグネルがいなくても守りに徹することは可能でしょうし、ウクライナも納得がいくまで攻勢を続けると思いますので、まだまだ先が見通せません」
面子を潰されたプーチン大統領が暗殺指令を出したとも報じられる中、当のプリゴジン氏は姿を隠しながら、SNSでメッセージを発信し続ける。かつての「守護神」が「疫病神」と化してしまったプーチン大統領にとって、終局を防ぐための持ち駒は限られよう。
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