同じ監督の映画が半年間に3本公開の異例 「大名倒産」の前田哲監督が語る“映画監督というお仕事“

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「公開スケジュールに監督への考慮はありません(笑)」

 神木隆之介主演の「大名倒産」が公開されたばかりの前田哲監督。今年はすでに「ロストケア」(3月24日)と「水は海に向かって流れる」(6月9日)の2本が公開され、「大名倒産」は3本目となる。

 映画会社が毎月、数本の映画を作り、自社所有の映画館で公開していた1950年代の黄金期ならいざ知らず、同じ監督の作品が半年間に3本公開されるとは異例だ。なぜこんなことが起きたのか。

 まずは前田監督の2021年から振り返る。10月29日に「そして、バトンは渡された」(ワーナー配給)を、10月30日に「老後の資金がありません!」(東映配給)を公開。1日違いという“ほぼ同日公開”で、それぞれ興行収入12.4億円、17.2億円とヒットを飛ばした。

「最初は本当に同日公開予定でしたが、もちろん僕のせいじゃないです(笑)。どうにか1日だけずらしてもらいました。恐れていたのは、両方コケること。失敗が続くと、メジャーでは撮れなくなってしまいますから。会社が違うので、どちらかだけヒットするのでもダメ。両方とも興行収入10億円を超えさせなきゃいけなかった。“ピンチはチャンス”とよく言いますが本当は違いますね。“チャンスはピンチ”なんです(笑)」(前田監督、以下同)

 いずれにしても2作はヒットで終わり、21年は華やかだったが、22年は公開作なし。そして23年は前述の通り、半年で3作が公開された。「僕としてはもう少し間を空けて公開してほしいですが仕方ありません。公開スケジュールに、監督への考慮はありませんから」と前田監督は笑う。

 公開時期がかたよった理由はこうだ。22年は前田監督にとって撮影イヤーだった。1月に「水は海に向かって流れる」、3月に「ロストケア」、8月からは「大名倒産」を撮影し、その間々に編集期間を設けて、仕上げていった。ただし、これらの撮影日程もスムーズに決まったわけではない。

「ロストケア」は当初、20年2月に撮影予定だったが、コロナ禍など諸事情もあって延期に。撮影再開を2年後の22年まで待ったのは、主演の長澤まさみと松山ケンイチのスケジュールが合わなかったこともある。「大名倒産」の撮影は、22年8月と9月に。どちらも21年中に決定していた。

 だが、21年10月頃に広瀬すず主演作「水は海に向かって流れる」の撮影が急浮上。撮影期間は「ロストケア」と「大名倒産」の間になりかけたが、前田監督にとっては「さすがに無理」だった。また、広瀬すずのスケジュールもあり、「ロストケア」撮影前の1月に決定した。

 だが3作の公開は、冒頭の通り全て23年の上半期に集中した。

「如何ともしがたいですよね。『水は海に向かって流れる』は既に完成していたので、僕としてはできれば去年公開してほしかった。でも俳優さんには番宣もある。そこの調整がうまくいかなかった。誰にとっても幸せな公開とは何でしょうね」

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