大阪「聴覚障害女児」死亡事故 逸失利益“健常者の85%”判決に遺族は「裁判所が差別を認めるのか」
「娘と努力を重ねた11年間は、無駄だったのでしょうか」
「加害者側は“9歳の壁”を主張してきましたが、平成12年以降、学校現場では、手話の導入年齢が乳幼児期に引き下げられた結果、聴覚障害児が9歳の壁にぶつからなくなりました。また、ろう学校高等部卒業生の大学進学率は、平成26年以降に有意に向上し、各大学では、聴覚障害を持つ学生のための支援体制が整備されています。また、UDトークなど、音声を認識して文字情報に交換するアプリケーションが開発され、Teamsなどのウェブ会議アプリケーションに会話内容を自動で字幕化する機能が搭載されるなど、近年のテクノロジーの発展により聴覚障害者の就労環境は大きく改善されているといえます。安優香に限ったことでいえば、日常会話もできていましたし、年齢相応の読み書き、計算の能力も習得できていました。口頭での発音も明瞭で、手話を用いない人とも口話で会話できていました」
逸失利益を“健常者の85%”とした2023年2月27日の一審判決後、母親のさつ美さんは、「娘は努力を重ねて頑張って11年間生きてきましたが、それは無駄だったのでしょうか。聴覚障害者というだけで社会に受け入れてもらえないのでしょうか」と胸中を明かしている。
父親の努さんは「結局、裁判所は差別を認めたんだなというがっかりした気持ちです。なぜ娘の努力を否定されなければいけないのか。悔しくてたまらないです」と、涙ながらに訴えた。
井出さん夫妻は、一審の判決に納得できず、高裁に控訴した。遺族が悔しさを滲ませる背景には、障害のあるわが子を自立させるため、親子で懸命に歩んだ日々があった――。
以下、後編に続く。