中国はバブル崩壊が進み、経済不振が長期化する理由

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中国経済にとっての頼みの綱はハイテク産業

 このような状況を受けて、中国ではこのところ政府に対して景気刺激策を求める声が高まっている。しかし、筆者は「期待外れに終わる」と考えている。経済対策を担う地方政府の財政が火の車だからだ。

 政府をあてにできないのであれば、成長の新たな源泉を見つけるしかない。中国経済にとっての頼みの綱はハイテク産業だ。

 中国経済にとっての朗報は、今年第1四半期の中国の自動車輸出台数が日本を抜いて世界第1位になったことだろう。中国の輸出台数は前年比58%増の107万台となり、日本の輸出台数(95万台)を上回った。電気自動車(EV)など新エネルギー車の輸出が伸びて全体の4割弱を占めた。

 中国は2009年に新車販売台数で米国を抜いて世界最大の市場となったが、今やEVの分野でも最大の市場規模を誇っている。

 だが、手放しでは喜べない状況だ。中国の自動車市場の過剰生産能力は年間約1000万台となっており(昨年の北米地域の全生産台数の3分の2に相当)、EVを巡る環境も同様だ。

 競争の激化で中国のEV企業は共倒れの状態になりつつある(5月30日付Forbes)。

 米EV大手テスラは中国・上海工場の増強を目指しているが、国内の過当競争を危惧する中国政府はEV工場の新規承認に後ろ向きだ(6月16日付ロイター)。

中国のハイテク産業は「張り子の虎」か?

 中国の航空機産業も存在感を高めつつある。6月中下旬に仏パリ近郊のル・ブルジェ空港で開かれたパリ航空ショーでは、中国国有の航空機製造会社「中国商用飛機(COMAC)」の展示ブースに多くの航空関係者が訪れた。COMACが開発した中国初の大型国産ジェット旅客機C919は、5月末から商用便として運航が始まっている。

 中国政府は、この旅客機こそ「中国製造2025」政策(2025年までに製造強国の一員となることを目指す)の「旗頭的な存在」と胸を張るが、「中国産とは言えないのではないか」との声も上がっている。商用機に使われている部品の大多数が海外製(大半が欧米製)だからだ(6月8日付CNN)。

 中国は「5G(第5世代移動通信)大国」としても知られている。国内の5G基地局数は2023年4月時点で273万基(全世界の5G基地局数の約6割)を超え、ユーザー数も6億3400万人(全世界の約6割)に達した。

 しかし、中国の3大通信事業者(中国電信、中国聯通、中国移動)の業績向上につながっていない。5Gの特性を生かしたキラーアプリがないことが災いしている(6月19日付東洋経済オンライン)。

 このように、中国のハイテク産業は「張り子の虎」だと言わざるを得ない。バブル崩壊で金回りが悪くなれば、「化けの皮」が剥がれるのは時間の問題だろう。

 思い起こせば、日本のハイテク産業はバブル崩壊後の救世主になることはできなかった。

 残念ながら、中国経済の不振は長期に及ぶのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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