リニア嫌いの川勝知事は“ご乱心” 「誤った珍説を披露するのはどうか」「風説の流布」「反省してないってことですよね」「そろそろ無理筋と気付いたら」会見で記者から前代未聞の集中砲火

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サイフォンの原理

 だが、JR東海は水不足が起きないよう解決策を示し、それを多くの専門家が妥当だと評価している。具体的には、県内のトンネルで発生する湧水量を毎秒2・67立方メートルと試算し、ポンプと専用トンネルを使って全量を大井川に戻すことを決定している。

 本来なら、山梨県内で行われるボーリング調査に「一滴残らず」の原理原則が適応されるはずはない。ところが、静岡県の川勝知事は問題視している。その理由として説明されたのが“サイフォンの原理”だった。担当記者が言う。

「サイフォンの原理を応用した最も身近なものが手動の灯油ポンプです。川勝知事の主張をまとめると、ボーリングを行う山梨県の断層は静岡県の断層とつながっている。そこに穴を開けたら、最初は山梨県の地下水が出るが、断層が“灯油ポンプ”のように働き、静岡県の地下水を汲み上げてボーリング調査の穴から湧水となって山梨県に流れ出してしまう。これは『静岡県の水は静岡県に戻す』という大前提と矛盾している、というわけです」

 これにジャーナリストの小林一哉氏が反論した。小林氏は『知事失格 リニアを遅らせた川勝平太 「命の水」の嘘』(飛鳥新社)などの著書があり、リニア問題に詳しい。

 小林氏は3月13日、現代ビジネスに「『命より水』を貫き通す川勝県知事の『傲慢』…静岡県のリニア議論がどうにもヤバすぎる…!」の記事を寄稿。文中で《「サイフォンの原理」発言がすでに“オカルト世界”に突入している》と批判した。

「珍説を披露」と異例の批判

 専門家も誤りを指摘した。3月20日、静岡県の有識者会議「地質構造・水資源部会専門部会」が開かれると、地下水の専門家の委員が「サイフォンとはちょっと違いますね」と川勝知事の発言を科学的な見地から否定した。

 3月28日に開かれた知事の定例会見に、記者は厳しい態度で臨んだ。まず、《「サイフォンの原理」という珍妙な説を県庁内で言い出したのは誰なんですか》という記者からの質問に、川勝知事は《私です》、《間違ってましたね》と答えた。

 当然ながら記者は公の謝罪を求めたが、知事は逃げる。さらに記者は、知事の定例会見は公式の会見であり、インターネットを通じて世界中にも配信されていると指摘。《公の場で誤ったことを堂々と、珍説を披露されるというのは、それいかがなものかと思う》と苦言を呈した。

 そもそも知事と記者クラブの力関係を考えれば、記者が苦言を呈するだけでも異例だ。川勝知事の発言内容がどれほど酷かったかが分かる。

 記者は“殿、ご乱心”と諫めようとした。ところが知事は《間違いなく流出する理由がある》と強弁。さすがの記者も《そんなこと言っちゃって大丈夫なんですか》と呆れた。当然ながらこのやり取りは、静岡県が作成した定例会見の動画や議事録に残っている。

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