リニア嫌いの川勝知事は“ご乱心” 「誤った珍説を披露するのはどうか」「風説の流布」「反省してないってことですよね」「そろそろ無理筋と気付いたら」会見で記者から前代未聞の集中砲火
サイフォンの原理
なぜ静岡県の地下水が山梨県で湧き出るのか。川勝知事が理由として説明したのが“サイフォン理論”だ。2月28日に行われた定例記者会見で飛び出し、これに「非科学的」といった批判が集中している。
28日の定例会見で、記者クラブの幹事社がボーリング調査について質問。川勝知事は《JR東海は、静岡県内の地下水が大量に山梨県内に流入することは想定しがたいという見解を示されております》と喋り始めた。
いくら県境で行われるボーリング調査とはいえ、普通なら静岡県内の地下水が山梨県側に流れ込むことは考えにくい。川勝知事がこのトーンで発言を続けていれば、常識的な見解ということで終わったはずだ。
ところが、川勝知事はさらに発言を続ける。ボーリング調査が行われる場所は《山梨県側の断層およびもろい区間が、静岡県内の県境付近の断層帯とつながって》いるという。
すると《いわゆるサイフォンの原理で、静岡県内の地下水が流出してしまう懸念がございます》と言い始めたのだ。
大井川の流量減少の歴史
そもそも川勝知事は「リニアのトンネル内で湧き出る静岡県の地下水は、工事中だろうと開業後だろうと、一滴残らず全量を県内に戻せ」と要求してきた。
JR東海と静岡県の協議はこじれにこじれ、県内の工区は依然として未着工だ。そのため当初の予定だった「2027年に品川・名古屋間を開業」は絶望的と見られている。
そもそも川勝知事の「一滴残らず」という主張が非科学的だ。とは言うものの、歴史的な経緯を辿ると感情的には理解できないこともない。静岡県内のリニアのトンネル工区は、大井川の水源である南アルプスの山中だ。その大井川の流域住民は、ダム開発を原因とする川の流量減少に悩まされてきたという歴史がある。
電力不足が深刻だった1950年代、大井川では水力発電所のダムが建設された。事業は国策だったため、流域住民の反対表明は実質的に不可能だった。川の水が発電所から発電所へと導水管を流れることで、大井川中流域における流水が減少、それに伴う被害が深刻化した。80年代には中流域の住民が「大井川に水を返せ運動」を展開したほどだった。
リニアの建設が始まりトンネル工事で湧水が生じると聞けば、再び大井川で水に絡む問題が起きてしまうのではないか──流域住民の一部が不安を覚えたとしても当然だろう。
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