奈良地裁に山上被告の減刑嘆願署名を送った女性の告白 母親は「生長の家」の信者 性自認で葛藤した人生 「いきなり死刑が執行されれば彼は無念に違いない」

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 6月12日の午前11時15分ごろ、奈良地裁に縦横約30センチの段ボール箱が配達され、中から金属反応が探知された。地裁は騒然となり、職員や来庁者は建物外に待避。爆発物処理車まで出動する事態になったことは記憶に新しい。

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 この日は午後から、安倍晋三元首相銃撃事件の第1回公判前整理手続きが行われる予定だった。山上徹也被告が出席の意向を示していたことから、地裁では午前中から手荷物検査を行うなど警備を強化していた。

 結局、段ボールの中には山上被告の減刑を求める1万3000人余りの署名が入っているだけと明らかになったが、当初はテロも疑われたため、メディアは何度も速報を配信した。

 例えば、テレ朝newsは12日、「宛名『山上被告公判前整理手続き』 不審物の差出人 東京『清瀬市の男』」との記事を配信した。

 共同通信も13日、「公判前整理手続き、妨害意図なし 地裁へ“不審物”送付の人物」との記事を配信。《段ボール箱を送付した》のは東京都の斉藤恵さんであり、取材に応じたと伝えた。

 テレ朝newsはタイトルに《清瀬市の男》と記し、《段ボール箱は東京・清瀬市の男性の名前》で送付されたと報じた。だが、斉藤さんの戸籍上の性別は女性と記載されている。

 共同通信の記事でも次のような記述がある。

《斉藤さんも宗教2世で、被告の境遇に同情する気持ちがあり昨年7月の事件以降、インターネット上のサイト「Change.org」で署名集めを展開》

 この《同情する気持ち》だが、斉藤さんは「私が同じ境遇だから同情したと報道されてしまうと、例えば両親や知人から『嘘だ』と批判されても反論できない」と異を唱える。

宗教2世の問題

 デイリー新潮は斉藤さんに「編集部は減刑を求める署名活動について賛同しない」ことを説明した上でインタビュー取材を申請し、了解を得た。

 斉藤さんは1964年に東京都の杉並区で生まれた。現在は59歳で戸籍上は女性であることは先に紹介した通りだ。性同一性障害のため、30代の時に男性ホルモン剤の投与を受けたことは事実だが、これは後で詳述する。

 斉藤さんは三人姉妹の長女で、専業主婦の母親は宗教団体「生長の家」の信者だった。

「公認会計士の父は、母の信仰に批判的な態度を取っていました。ただ、生長の家は過酷な献金を要求したり、信者獲得などで重いノルマを課したりすることはありません。幼い頃から衣食住に不自由したことはなく、大学の学費も出してもらいました。一部報道で私が『宗教2世だから同情した』と書かれたことには困惑しています。山上被告をはじめとする統一教会(現・世界平和統一家庭連合)やエホバの証人といった2世信者の方々が味わった苦しみを考えれば、私のものとは比較になりません。『あなたは他の2世信者とは違う。あなたは恵まれている』と非難されたとしても、当然だと考えています」

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