リブゴルフとPGAツアーが和解も課題山積 モナハン会長が「手のひら返し」で最大の批判の的に

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「出戻り組」への処遇を示すべき

 リブゴルフ(あるいはPIF)から巨額の移籍料をオファーされてもそれを拒否してPGAツアーに留まってきた選手たちの怒りや不満に対する解決策は、やっぱり埋め合わせとしての「お金」である。

 その埋め合わせ金をPIFがPGAツアーのどの範囲の何人の選手にいくら支払うのかが、まず明らかにされるべきだ。

 そしてリブゴルフが実質的に消滅するとなれば、リブゴルフ選手はPGAツアーあるいはDPワールドツアーに戻ることになるだろうが、その際、彼らにペナルティ(罰金)を払わせた上で戻らせることにしなければ、PGAツアー選手は「出戻り組」を受け入れる気にはならないだろう。そのための具体的な方法案も早急に示さなければ、PGAツアー選手たちの怒りや不安は収まらないはずだ。

 選手ファーストで様々な対策を講じた上で、PIFと合意したことでPGAツアーが何を得るべきであり何が得られるかといった「具体的なベネフィット(利益、恩恵)を、モナハン会長は示すべきだ」と米メディアは指摘している。

 ただし、そこには「モナハン会長がカムバックするのなら」という但し書きも付されている。

姿を消したモナハン会長

 モナハン会長は6月6日朝に統合合意を発表し、その日のうちに米CNBCのテレビショーにルマイヤン会長と並んで出演、満面の笑顔を輝かせた。

 翌日にはRBCカナディアンオープンの試合会場に駆けつけ、選手会に出席。しかし、モナハン会長を待っていたのは「手のひら返し」「裏切りもの」「騙された」といった選手たちからの怒声だった。

 翌週、6月13日にはモナハン会長が体調不良によって当面休養することがPGAツアーから文書で伝えられた。

 それ以降、モナハン会長は一切、姿も見せなければ、言葉も発していない。

 モナハン会長が不在の間、会長業務を代行するのはPGAツアーのCOO、ロン・プライス氏とプレジデントのタイラー・デニス氏の2人だが、どちらもPIFとの水面下の交渉には一切関わってはいなかったという。

 PIFとの合意内容を知っているのは、それをモナハン会長に進言して交渉役を買って出たPGAツアー理事のジミー・ダン氏とエド・ハーリビー氏だが、会長業務を代行するのがこの2人ではなく何も知らなかった2人という点も何やら不可解だ。

 そんな中、米メディアの間では、療養中とされているモナハン会長が「このまま戻ってこない」ことを予想する声が広がりつつある。だからこそ「モナハン会長がカムバックするのなら」という但し書きが付されるようになっている。

 逆に、最大限、ポジティブな見方として、「モナハン会長は自分が一歩身を引くことで、今後のことを選手たちに決めさせ、選手たちの総意で動くPGAツアーの本来の姿に戻そうとしている」という見方もある。

 しかし、雲隠れ中のモナハン会長が「あとはキミたちに任せた」と言って、このままカムバックすることなく消えてしまったら、それ以上に無責任な話はない。

 リブゴルフやノーマンCEO、サウジ側を批判していたモナハン会長は、試行錯誤を続けた挙げ句、今、巡り巡ってモナハン会長自身が最大の批判の的になっている。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮編集部

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