小室眞子さんはニューヨーク在住の「先輩」オノ・ヨーコさんを参考にしてみてはどうだろうか

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 小室圭さんが米国ニューヨークでの弁護士資格を得たことで、現地での生活にも順風が吹いているように見える小室さん夫妻だが、厳しいコメントが常にネット上に存在する状況が続いている。婚約から結婚に至る過程がその背景にあるとはいえ、空気を変える手段はないのだろうか。

 小室眞子さんと同じ学習院女子中・高等科出身の藤澤志穂子氏(昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員)は、偉大な“先輩”の人生は、一つの参考になるのではないかと分析する。鍵を握るのは学習院で学ぶ「ノブレス・オブリージュ」である、というのだ。以下、藤澤氏の新著『学習院女子と皇室』をもとに見てみよう(同書をもとに再構成しました)。

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学習院OGの二人

 現在、ニューヨークには二人の有名な日本人女性が住んでいます。一人はオノ・ヨーコさん(90)。ジョン・レノン夫人にして平和運動など社会的な活動でも知られる人物です。

 もう一人は小室眞子さん(31)。言うまでもなく秋篠宮家の長女で、夫、圭さんとのニューヨーク生活はしばしば日本のメディアに取り上げられています。

 この二人は実は出身校も共通しています。学習院女子中・高等科のOGなのです。

 ヨーコさんは大学も学習院に進学しましたが、ご両親の渡米に伴い、現地の大学に進みました。一方、眞子さんは国際基督教大学にAO入試で合格し、そこで出会ったのが小室圭さんです。

 筆者もまた学習院女子中・高等科出身です。OGであるお二人にはある種の「芯の強さ」のようなものを感じます。同校出身者には「芯が強く、あるがままの自己を貫き通す」個性派が多いという印象が、筆者やその周辺の卒業生にはあるのです(多少の身内びいきが入っている点は何卒ご容赦ください)。

 皇族に代表されるような恵まれた環境に育った子女が多いのですが、その恵まれた立場を活用し、ボランティアからビジネスまで、様々な活動をする卒業生が多いのも事実です。

同窓生たちの嘆き

 もっとも、学習院のOBやOGたちが眞子さんに強いシンパシーを感じているかといえば、残念ながら微妙なところがあります。

 2017年の婚約発表直後はともかく、その後さまざまなトラブルや疑惑が伝えられるにつれて、筆者を含む学習院OB・OGにはずっと複雑な思いがありました。

「国際基督教大学(ICU)に進んでいなければ、こんな騒ぎにはならなかったのに」

「秋篠宮家は何故こんなにも学習院を避けるのか」

 そんな気持ちでしょうか。近代から現代における皇族方は、ほとんど例外なく学習院に進学していますが、秋篠宮家は様子が異なります。ご夫妻はともに幼稚園、あるいは初等科から大学まで学習院ですが、眞子さん、佳子さまが幼稚園から女子高等科まで通ったものの、大学ではICUに進学、悠仁親王に至っては幼稚園から中学までお茶の水女子大学附属で、同校の提携校進学制度を活用し、2022(令和4)年4月に筑波大学附属高校に進学されました。

 眞子さん、佳子さまのICU進学は、多くの生徒に門戸が開かれているAO入試に挑戦された上での入学です(佳子さまの場合、いったん入学した学習院大学を退学した上での再挑戦でしたが)。悠仁親王の筑波大附属高校への進学で適用された制度も、同じように、一般生徒にも広く門戸を開いているのであれば、多くの国民に支持されたことでしょう。ですがそうした実績が見えづらい点が、やや物議を醸してもいます。悠仁親王は、再び推薦制度を活用し、東京大学への進学を希望されている、との憶測も出ています。

ノブレス・オブリージュ教育

 もちろん結婚同様、どこに進学するかは当人の自由です。

 ただ学習院は、元は皇族に仕える華族のために設立された学校という歴史的経緯があります。学習院女子部は、明治時代に設立された「華族女学校」をルーツとし、独自の同窓会組織「常磐会」と徽章「八重桜」を持っています。かつては「良妻賢母」教育を方針としてきましたが、これは上流婦人としての「教養と品格」を身に付けることを意味しています。決して家事育児に長けるための教育ではなかったところが、他の女学校とは異なる点かもしれません。

 その文化と伝統は、現代の目で見た場合には、奇異に映る点もあるでしょう。日々の挨拶は「ごきげんよう」、歴代の皇后から下賜された「御歌」を古典の授業で学び、日常的に唱和する女子校は、他にあるはずもなく、由緒正しい「日本一のスーパーお嬢様学校」といえます。

 その教育の根幹にあるのは「ノブレス・オブリージュ」の精神です。皇族・華族を始め「恵まれた境遇の者が、自己の利益を優先することなく、社会に貢献する」という精神は、男子のみならず、女子も心にとめなければいけないこととされてきました。

 もしも昨今、秋篠宮家や眞子さんに対して厳しい目が向けられているとすれば、もしかすると「ノブレス・オブリージュ」の精神を感じ取っていない国民がいるということなのかもしれません。この点については、宮内庁は努力や改善の余地があるのではないでしょうか。

ヨーコさんの人生とは

 個人的には、オノ・ヨーコさんのキャリアは眞子さんの今後の参考になるのではないか、と思っています。

 2022(令和4)年夏に東京で公開された「ロックン・ロール・サーカス」という、1968(昭和43)年制作のドキュメンタリー映画がありました。当時ビートルズと人気を二分したロックバンド、ローリングストーンズの、サーカス仕立てのライブ映像の復刻版であり、ヨーコさんが当時の恋人で後に結婚するビートルズのジョン・レノンと出演しています。

 その中で、ヨーコさんがひたすら叫ぶだけ、といっていい演目があります。バックバンドはジョンと、ストーンズのキース・リチャーズ、そしてエリック・クラプトンという錚々たるメンバーです。この3人が同じステージに立つことそのものが奇跡に近い出来事です。ストーンズがジョンに出演を打診、その見返りにジョンが、ヨーコさんの出演を了解させたのでしょう。

 仮に他のアーティストがひたすら叫ぶだけのステージを企画したら、果たしてこの3人はバックを務めたでしょうか。おそらく断ったはずです。

 ヨーコさんは70年代前半に、ビートルズが立ち上げたレコードレーベル「アップル」から「無限の大宇宙」(1973年)など複数の実験的なアルバムを発表しています。こちらもジョンの存在なくしては発表できなかったと思われます。すでに前衛芸術家として一定の評価があったヨーコさんですが、音楽に関しては、ヨーコさんを高く評価していたジョンの「七光り」を最大限に活用したように見えてしまいます。実際、商業ベースで大きな成功を収めたとは言えません。

 ヨーコさんはビートルズのファンからも必ずしも好意的に見られていたわけではありません。解散の元凶のように捉えられていた時期も長かったのです。後期のドキュメント映像などには、他のメンバーもどこか彼女に違和感を抱いているように見える場面も少なからずあります。

 ヨーコさんは、もともと財閥の流れをくむ名門の家に生まれ、戦前から米国で生活していた帰国子女、という恵まれた立場に加え、出会ったジョン・レノンの力を最大限、活用してきました。

 単にジョン・レノン夫人の前衛芸術家として表舞台に出ているだけだったらお金持ちのお嬢さんの「道楽」で終っていたかもしれません。

 ですがヨーコさんの凄いところは、その立場を最大限、生かして活動を平和運動に昇華させたところではないでしょうか。1980年のジョンの没後は、彼のレガシーを守る思いもあったでしょうが、その精力的な活動は、もはや「元ビートルズのジョン・レノンの妻」という枕詞が不要なくらい広がり、高く評価されています。

 恵まれた立場を生かし、努力で何かをつかみとり、社会に貢献する。前向きに人生を生きる。ヨーコさんの人生は、学習院女子部での教えをもベースに築いた「ノブレス・オブリージュ」そのものではなかったかと筆者は感じます。

 ヨーコさんと同じニューヨークで暮らす眞子さん。眞子さんには、もちろん幸せな人生を送る権利がありますが、普通ではない環境に支えられている立場を理解し、周囲への感謝の念は忘れず、自重もしてほしい。そしてご自身の才能を、社会に役立てていただきたいと筆者は考えます。ヨーコさんと同じように、努力で何かをつかみとり、社会に貢献する女性になってほしい、僭越ながら同じ学習院女子部に籍を置いた者として、そう願っています。

『学習院女子と皇室』(新潮選書)から一部を引用、再構成。

藤澤志穂子(ふじさわしほこ)
昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。学習院大学法学部卒、早稲田大学大学院文学研究科演劇専攻修士課程中退。1992年産経新聞社入社、経済本部、米コロンビア・ビジネススクール客員研究員を経て2019年退社。著書に『出世と肩書』『釣りキチ三平の夢 矢口高雄外伝』。

デイリー新潮編集部

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