「ロシア軍の砲撃はもう真っ平だ」「地雷が流れてきた」 ダム破壊で浸水のヘルソン市最新レポート

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14人が死亡、42名が行方不明

 しばらくすると救急隊のボートが帰ってきた。救助された男性が大きなカゴを抱えて降りてくる。中にはインコが2羽、もう一つのカゴにはチンチラがいた。

「このチンチラはシュシュと言います。4日間、餌もなしで生きていました」と飼い主のセルゲイさんは安堵の表情を浮かべる。彼の家はここから2キロ先の中州にあり、流れ込んだ水は自宅の2階にまで達しているという。2匹の猫を連れて避難してきたオレグさんはこう話す。「俺たちが暮らしている街は対岸のロシア軍から度々砲撃を受けていた。もう真っ平だ」。

 前日、この通りの救護地点も砲撃の被害にあっていた。いつまた攻撃を受けるか分からないので、建物の陰に隠れるよう兵士から指示された。

 そばの路地では、自宅のすぐ手前にまで水が迫った住民が不安そうに集まっていた。ロシア軍が仕掛けた地雷が流されて爆発したとの情報もあるという。「これからどんな影響が出るか予想がつかない」と、女性たちはため息を漏らした。

 ウクライナ当局はダムの決壊で、これまでに14人が亡くなり、子供7人を含む42人が行方不明だと発表。さらに11日には、東部でも新たに別のダムが破壊されたことを明かした。平穏な暮らしが戻る日は、まだ見えない。

撮影・文/尾崎孝史

週刊新潮 2023年6月22日号掲載

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