“元祖ジョーカー”小田急線刺傷事件 初公判で再現された「快速急行の地獄絵図」と「4件の万引き」

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たまたま目の前に座っていた20歳の女性に襲いかかった

 だが、万引きが見つかった食料品店は午後8時に閉店することを知った対馬被告は、以前から考えていた電車内での無差別殺人を実行に移そうと決意する。そして、部屋にあった刃渡り21センチの包丁、はさみ2本、サラダ油をトートバッグに入れてアパートを出た。最寄りの小田急読売ランド前駅近くのコンビニで、さらに予備のライターやサラダ油を購入。午後8時18分、新宿行き各駅電車に乗り込んだ。

 同26分、登戸駅で快速急行に乗り換える。そして、同29分、7号車に座っていた「もともと殺害の標的にしようとしていた、男にチヤホヤされるタイプの女性に近かったAさん(当時20)」(検察側冒頭陳述より)に、包丁で襲いかかった。

「Aさんの正面から、右手に逆手に持った包丁で、Aさんの右胸腹部付近を1回突き刺し、さらに座席に座ったままの状態でからだをひねって防御しようとしたAさんの上半身を2回突き刺した。さらに立ち上がって逃げようとしたAさんの背後から、背中を包丁で1回突き刺した」(同)

阿鼻叫喚の車内

 次に狙われたのは、7号車内で逃げようとしていたBさんだった。まずBさんを背後から、右側腹部に1回切りつける。Bさんは進行方向側の8号車へと逃げようとしたが、連結部分は逃げ惑う乗客が殺到しており、転倒者もいて逃げ場がなかった。仕方なく車内の座席に座ったBさんの左下腹部を対馬被告は再び切り付けた。

 そして、同じく行き場がなく7号車内にいたCさんの上半身を狙って包丁を振り下ろし、防御姿勢をとったCさんの右上腕部を切りつけた。

 さらに他の乗客を襲おうとして包丁を振り回したのだが、包丁の刃が金属製の握り棒に当たって折れたため断念。8号車に移動し、床にサラダ油をまいてライターで火をつけようとしたが引火せず、緊急停止していた電車の扉から車外へ逃走。

 約1時間後、杉並区内のコンビニで「今トップニュースになっている事件の犯人は自分です」と名乗り、警察への通報を依頼し、駆けつけた警察官に確保された。

 Bさんは全治2週間、Cさんは全治1週間の傷害を負ったが、深刻だったのは何度も包丁で突き刺されたAさんである。

「左前腕の神経損傷による左手・左前腕の感覚障害の後遺症が残存する可能性のある全治3カ月の刺創、外傷性右血気胸、右第6肋骨骨折、左橈骨神経浅枝、左後骨間神経断裂及び左橈骨動脈断裂の傷害を負わせた」(検察側の冒頭陳述より)

検察官「勝ち組の女性を狙った」

 なぜ、対馬被告はこのような凶行に及ぼうとしたのか。

「かねてから男性の友人から見下されている、女性から軽くあしらわれていると感じ、そのような男女が幸せになっていくことが許せないという思いを抱き、幸せそうなカップルや男にチヤホヤされる、いわゆる勝ち組の女性などを狙った」

 検察官はこう指摘したが、まだ動機の全容は見えない。6月29日から始まる被告人質問で本人がどう語るのかを注目したい。

デイリー新潮編集部

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