“元祖ジョーカー”小田急線刺傷事件 初公判で再現された「快速急行の地獄絵図」と「4件の万引き」
昨日、初公判を迎えた京王線刺傷事件を起こした「ジョーカー男」は、この事件の影響を受けて犯行に及んだという。2021年8月、走行中の小田急線車内で3人の乗客を包丁で刺し、殺人未遂などの罪に問われた対馬悠介被告(37)の裁判員裁判初公判が、6月27日、東京地方裁判所で開かれた。法廷で明らかにされたのは、犯行の引き金となった「万引き事件」の詳細と逃げ場のない快速急行車内で乗客たちが見た“地獄絵図”だった。
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【写真】中央大学在学中は「イケメン」と女子から人気があった対馬被告。女性たちと楽しげに写真に収まっていた
1カ月前には「大乱闘スマッシュブラザーズ」の万引きに失敗していた
手錠をかけられ法廷に現れた対馬被告の姿は、逮捕時に繰り返しテレビで流れた“今どきのイケメン”とは打って変わっていた。茶から黒に変わった前髪は眉までもっさりとかかり、うつむきがちで陰気な印象。服装はシワクチャの白シャツに黒のズボンで、開いた襟からは黒い下着を覗かせていた。
検察官が起訴状を読み上げた後、証言台に立った対馬被告は、裁判長から「起訴事実に違っているところはないか」と問われ、「あ、ないです」。傍聴席に度々目を向けるなど、始終、落ち着かない様子だった。弁護人は起訴事実について争わないとしたが、「強度の殺意はなかった」などとして量刑で争う姿勢を示した。
検察側の冒頭陳述や証拠調べでは、無差別死傷事件に至るまでに対馬被告が起こした、未遂を含む4件の「万引き」の詳細が明らかにされた。
事件を起こす約1カ月前の7月15日、対馬被告は世田谷区内の古本等販売店でゲームソフトを盗もうと、店内でケースの包装用ビニールを破る器物損壊事件を起こしていた。対馬被告が欲しかったゲームは、任天堂の大ヒット作「大乱闘スマッシュブラザーズ」。だが、ビニールを引き裂いたものの中身が入っていなかったため未遂に終わる。この事件は、店主が後に被害に気づき、警察に申告したことで明らかになった。
万引きを捕まえた店員に放った信じ難い言葉
そして、迎えた事件当日の8月6日、対馬被告は朝から万引きを繰り返す。まず午前7時過ぎ、自宅近くのコンビニで「爽健美茶」(108円)を、午前11時40分頃には新宿区内のコンビニで「ハイネケン」「バドワイザー」「アサヒスーパードライ」など酒4点(計908円)を窃盗。いずれも所持していた白いトートバッグに隠すなどの手口で成功した。
だが、その数分後、近くの食料品店で「ベーコン」(859円)と「オリーブ塩漬け」(262円)を盗もうとしたところ、店員にバレてしまい、警察を呼ばれてしまった。「謝罪の言葉はないのか」と糾す店員に対し、対馬被告はこう答えた。
「こういう出会いになって残念です。出会い方が違えば食事に行きたかった」
その後、新宿署で取り調べを受け帰宅。午後6時頃、家賃2万5000円のアパートで酒を飲んでいたが、万引きを発見した店員に対し激しい恨みを募らせ、殺しに行こうと考えた。
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