ドラフト戦線に異常あり? 大学生は“空前の大豊作”なのに、スカウトが「即戦力が少ない」と指摘する理由

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高校卒選手の将来性を重視する球団も

 ここで名前を挙げた6人は、1位で競合したのは佐藤のみ。大勢は「外れ1位」、牧は2位でのプロ入りとなっている。スカウトのコメントと、ドラフト時点での入札状況を踏まえると、やはり即戦力を見極めるのは難しくなっていると言えそうだ。そして、“即戦力不足”がドラフト全体に与える影響もあるのではないかという。別のスカウトは以下のように指摘する。

「高校卒の選手は時間がかかると言いますけど、最近は意外に早く(一軍に)出てくるケースが増えていますよね。侍ジャパンに選ばれた高橋宏斗(中日)は、大学に行っていたら、まだ3年生ですし、今年は同い年の山下舜平大(オリックス)も一軍で活躍している。野手では、昨年は長岡秀樹(ヤクルト)、今年は秋広優人(巨人)と3年目の選手がレギュラーになっています。(高校卒の選手は)二軍でもなかなか結果が出ないという選手ももちろん多いですけど、早くからモノになった時のスケール感はやっぱり大きいですよ。村上宗隆はその代表例ですね。こうした点を考えると、今年は大学生が豊作だと言われていますが、高校生の有望選手をまず指名しようと考える球団も当然、出てくると思います」(セ・リーグ球団スカウト)

 3月に行われたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の侍ジャパンも、NPBでプレー経験のないヌートバー(カージナルス)を除く29人の出身を見てみると、17人が高校卒で最多だった(※追加召集を含む)。高校卒の選手の将来性の高さがよく分かる一例だ。

 今年のドラフト戦線は、超高校級のスラッガーである佐々木麟太郎(花巻東)や真鍋慧(広陵)ら、貴重な大砲候補が揃っている。スラッガータイプの選手は特に育成が難しいとも言われるが、そのスケールの大きさを重視する球団が出てくる可能性もあるはずだ。果たして、各球団は、高校生と大学生のどちらを重視する戦略をとるのか。今後のドラフト戦線の動向にぜひ注目してもらいたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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