【棋聖戦】佐々木大地七段が藤井聡太七冠に勝利 「再逆転負け」を許すも…その後の藤井の変化に注目

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「羽生越え」の八冠を目指す藤井聡太七冠(20)が佐々木大地七段(28)の挑戦を受ける棋聖戦五番勝負の第2局が、6月23日、淡路島の「ホテルニューアワジ」(兵庫県洲本市)で行われた。棋聖位は、2020年7月、大阪で藤井が初めて獲得した記念すべきタイトルだ。【粟野仁雄/ジャーナリスト】

一時は藤井が94%優勢

 毎年このホテルで棋聖戦の一局が行われる。昨年は第1局が行われ、永瀬拓矢王座(30)を挑戦者に迎えた藤井は、千日手で2回指し直すという大苦戦の末に敗れている。一昨年は第2局が行われ、渡辺明九段(39)を相手に171手で辛くも勝利している。

 淡路島での対局は厳しい戦いが続いたが、それでも昨年も一昨年もタイトルを防衛した。4連覇を狙う今期は、ダナン市(ベトナム)での第1局に先勝し、今回の第2局で勝てば早くも防衛に「王手」だった。

 先手の佐々木が、得意とする角道を開かない居飛車戦法の「相掛かり」で進んだ。藤井も同じ形で対抗し、最初の1時間で35手も進んだが、午前10時の「おやつタイム」の後、昼食休憩までは3手しか進まないなど、ぱたりと遅くなる。

 中盤は長考も多くなり、互いが時間を消費してゆく。

 全体に佐々木の優勢で進んでいたが、藤井が66手目に「3九」に飛車を打ったあたりから形勢は藤井に傾いてゆく。さらに、藤井が102手目に「7八龍」とすると形勢が大きく藤井に傾き、ABEMAのAI(人工知能)評価値も94%くらいで「藤井優勢」と示した。その差が徐々に開くかと思って注視していたが、それは違った。

ガクッとうなだれた

 103手目、佐々木が盤のど真ん中、「5五」に勝負手の角を打った。

「2二」の藤井玉に対しての王手である。だがこの角は、藤井が銀で取れる位置だ。藤井は「同銀」と角を取る。佐々木には大きな駒損に見えたが、敵の銀が「5五」に移動したことで危なかった佐々木玉が上方に遁走する道ができた。これで自玉の「詰み」を逃れることができた佐々木は、攻撃に転じた。

 緊迫する1分将棋の中、敗北を確認した藤井はガクッとうなだれ、「駄目だ、駄目だ」というように首を軽く左右に振る仕草を見せた。ポーカーフェイスの印象の藤井だが、敗けを確認した時ははっきりと気持ちを仕草や表情に出すことがある。

 佐々木が111手目に香車を「3三」に打つと、藤井は「負けました」と投了した。

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