保守王国「福岡」で相次ぐ“自民分裂”騒動 背景に「麻生太郎」副総裁の“終活”問題
公認を得られなかったとしても
そこにきて、新たにもうひとつ、分裂選挙となりそうな選挙区が発生したのだ。
「福岡4区です。ここは9区、10区とは違い、先の衆院選では自民党の宮内秀樹代議士が勝っています。普通に考えれば揉めることもなく、現職が再びそこから出馬するのですが、なんとここにも自民党系の地元県会議員が出馬を表明したのです。この県会議員は、2012年の選挙の際も名乗りを上げたものの、選考の結果、宮内氏が選ばれた。今回はその時のリベンジとばかりに改めて名乗りを上げたわけです。しかも今回は、“公認を得られなかったとしても無所属として出馬する”と公言。こちらも、分裂やむなしのムードが一気に高まっています」
9区、10区に続いて4区まで。ここまで分裂が続く背景には、何があるのか。地元関係者が声を顰める。
「自民党の副総裁を務める、福岡8区選出の麻生太郎氏の存在です。そもそも、北九州市長選が分裂になったきっかけは麻生氏でした。麻生氏は、北九州市長に当選した武内和久氏とかねて親交があり、そんな武内氏が出馬することを知り、自民党が推薦した候補を“応援しない”と宣言。静観を決め込んだのです。それを察した麻生系の地方議員が武内氏を応援したというわけ。つまり、9区、10区から出ようとしている北九州市長側の候補者は、麻生氏側ということになります」
味方がいない
さらに、
「無所属でも福岡4区から出ようとしている地元県議も、麻生さんと昵懇。彼の出馬を暗に許し、後押ししたのは、麻生さんだったのではと囁かれているのです。麻生さんは地元・福岡に、少しでも多くの麻生派の国会議員を誕生させようとしているのです」
その理由はといえば、
「意外に思えるかも知れませんが、現在、福岡県選出の衆議院議員で、麻生派に属しているのは、福岡1区の井上貴博代議士一人だけなのです。総理経験もある自民党の重鎮で、大派閥の領袖でありながら、地元に味方がここまでいないのは珍しい」
それにしても、地元で麻生派を増やそうと思えば、これまでもチャンスはあったはず。なぜここにきて派閥拡大を狙っているのか。
「麻生さんも今年9月で83歳。いよいよ、代替わりが近づいていると言われています。その後継と目されているのは、息子の将豊(まさひろ)氏。現在、麻生家が経営する『麻生商事』の社長を務める38 歳で、今年1月から日本青年会議所(JC)の会頭を務めています。プライベートでは2015年に北九州市の開業医の娘と結婚。渋谷区にある麻生家の豪邸で、盛大な披露宴を執り行ったことでも話題になりました。本人は気のいいお坊ちゃんといったタイプで、金持ち経営者の友人も数多く、彼らと夜の六本木で遊んでいるようです」
その一方で、
「将豊氏は政治にはこれまでほとんどタッチしておらず、麻生さんが引退した後、いきなり選挙を戦えるのかと、後援会は頭を抱えています。それでもタイムリミットは刻一刻と迫っているわけで、それを一番よく知っているのが他ならぬ麻生太郎さんだということ。自分が現役でいる間に、地元に麻生派の議員を少しでも増やし、地盤を固めた上で、将豊氏に譲りたいという親心の表れであり、麻生氏の政治家としての、“終活”なのではないでしょうか」