NHK元ディレクターが「ニュースウォッチ9」“捏造報道”を検証 “取材の素人”が企画、番組責任者は「栄転」していた
NHKが国会でついた「ウソ」
今回はBPO案件となり調査が行われることとなりましたが、チェック体制の不備だけでなくもうひとつNHKにはバレたらまずいことがあります。
それは、NHKの山名啓雄 ・専務理事の国会答弁に含まれた嘘です。山名氏は「取材当初は『繋ぐ会』から新型コロナワクチンの接種後に亡くなられた方を紹介されるとは担当者は思っていなかった」という趣旨の回答を行いました。各週刊誌からの質問に対しても、NHKは同じ趣旨の回答をしました。
しかし、これは明らかな嘘です。前述したように、番組責任者はロケが始まる前から「副反応で亡くしたと訴えるが表現は慎重に」と現場に指示を出しているのです。そもそも担当者Aは「繋ぐ会」の公式サイト上のフォームから取材申請を行っています。公式サイトのトップページには「ワクチン接種で亡くされた方々の救済を目的とした会」とあるので、この説明には無理があります。
番組責任者は「栄転」していた
NHKには、今回の不祥事を徹底検証せず、隠蔽しようとしている節があります。
真っ先に行われたのは関係者への緘口令と、放送原稿や報道関係の予定等を共有する「報道情報端末」と呼ばれる端末の情報をリークした犯人探しでした。特に、Aが所属していた編集セクションでは厳しい取り調べが行われ、全局の全スタッフに対しては端末のIDとパスワードの変更と機密保持に関する誓約書(紙)の提出も行われました。
しかも、「犯人捜しを行ったことが、物証と共に世に出たらさらに問題だ」ということで、指示は全て口頭だったそうです。
Aの直属の上司とニュースウオッチ9の編責2名は、7月1日付での異動が決まっています。2名の編責のうち実質的に今回のVTR制作を主導した人物は大阪放送局の報道統括へと「出世」。役職もチーフ・リードからシニア・リードへとランクアップします。大阪への異動なので、今後詳しい調査を行うのは難しくなります。そして、当日のウオッチ9の責任者だった人物は解説委員室へと異動します。解説委員といえば、現在は民放で活躍する岩田明子氏のように、NHKの報道の中枢を担う“エリート”の集団です。
職員向けに実施された「再発防止」の取り組みは、「知っときタイ」という6月19日付で考査室が周知したA4用紙1枚の文書の配布だけでした。
「取材先との関係 基本的な考えは」と題されたその文書の中には、《取材の許諾を得るために、番組のテーマや取材趣旨をゆがめて伝えたり、曖昧にしたりしてはいけません》など、明らかに今回の不祥事を受けた注意事項が書かれていますが、この文書の中にもワクチンやニュースウオッチ9という文言は一切ありません。
ニュースウオッチ9の件は、局内でも一連の対応に疑念と不満がうず巻いています。トカゲのしっぽ切りのような処分だけではなく、責任者であった報道局の幹部たちがどう関与したのか詳細を明らかにし、本来の公共放送のあるべき姿に生まれ変わる姿勢を見せるべきです。