「普通の子やけえ…」「現実味がない」自衛隊銃乱射、容疑者の父と弟が明かした胸の内
激高した父親
元バイト先のラーメン店の店員は、こう回想する。
「自衛隊に入るのが小さい頃からの夢だって、ことあるごとに言っていて、でも学力は追いついてなかったみたいです。高2になる前にバイトはやめて、高3になってから同級生とラーメンを食べに来たんだけど、以前は耳にかかるくらいのロン毛だったのに丸坊主になってた。羽島から岐阜市の山の上にある岐阜城まで一日がかりで自転車をこいでいくこともあったそうで、自衛隊に入るために体を鍛えていると言ってました」
かくて念願かなって自衛隊に職を得たことに、実父の喜びはひとしおだった。実父の勤務先である岐阜市内の運送業者の関係者が言う。
「“息子がこの春から自衛隊に入る”と話した時は、とてもうれしそうでしたよ。入隊の際にも、わざわざ息子を送り届けたようです」
そんな幸せも、それからわずか3カ月後、息子自身の凶行によって絶たれてしまうのである。
「事件の日、父親から“実は息子があの事件を起こしてしまった。今後、どうなるかわからないが、ひとまず仕事はしばらく休ませてくれ”という連絡がありました」(同)
父親はマスコミの取材攻勢を避けて妻子とともに自宅から一時避難した。が、事件から5日後の19日、自衛隊警務隊の家宅捜索に立ち会うために帰宅。現在、16歳になる三男と一緒に自宅で寝起きしている。
三男は取材に対し、
「起きてしまった事件なんで。なんと言ったらいいんでしょうかね、悲しいというか、現実味がないっていうか」
つとめて平静にそう言うのだが、父親は、
「たわけ! うるせえ、馬鹿野郎!」
と激高。だが、Aのことについて聞くと、
「普通の子やけえ……」
と言って、肉親としての心情ものぞかせた。
どうして“危険人物”が候補生に選ばれた?
事件は未然に防げなかったのか。この点、さる陸自関係者に聞いてみると、
「射撃訓練などで隊員が暴走して別の隊員を撃とうとしたり、あるいは実際に撃ったりした時にどうすべきか、という行動指針は自衛隊にありません。撃たれたらどうしようもない。銃を持つ相手を抑える側は、いかに訓練の教官といえども、無暗に銃は持てませんから。弾倉と弾薬を射座に着く前に持てるという現在の状況こそが問題なのです」
そもそもどうしてAのような“危険人物”が候補生に選ばれてしまったのか。
「慢性的に自衛隊員のなり手が足りておらず、実際には希望すれば誰でも入隊できるというのが現実なんです」(同)
銃を持つことを許される組織に「人を撃ちたい」衝動に駆られたような危険人物が難なく入れてしまう。もし彼が弾薬を奪って、射撃場から抜け出していたら……。社会にとって重大な脅威と言うほかあるまい。18歳が放った無情の銃弾は、国民を守る自衛隊への信任をも揺るがしたのである。
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