「普通の子やけえ…」「現実味がない」自衛隊銃乱射、容疑者の父と弟が明かした胸の内

国内 社会

  • ブックマーク

「格闘モノ」「戦争モノ」に傾倒

 稼いだ金は趣味に費やしていたという。

「自転車が趣味で、ロードバイクに乗っていました。ゲームも好きで、ソニーの『プレイステーション4』も買っていた。あとは友達とカラオケに行ったり、ご飯を食べに行ったりしていました」

 先の同級生も同意する。

「はい、彼とはカラオケに行って遊ぶことが多かったですね。『港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ』とかの古い曲をよく知っていて、歌うのが好きでした」

 1975年の曲である。

「ええ、“親父が聴いていて”と言ってました。里子に出されても父親を恨んでいる様子などなかったですし、自分の境遇をある程度は受け入れていたはず」

 だが他方、こんな逸話も思い起こす。

「里親が作るお弁当に猫の毛が入っていた時は嫌がっていました。“また(猫の毛が)入ってるわ”と言って表向きは笑ってみせてましたが、以降、お弁当は持ってこなくなりました」

 こうした“里子生活”の最中に「格闘モノ」「戦争モノ」へと耽溺していく。

「高校の図書館に漫画が結構あって、中国の春秋戦国時代を描いた『キングダム』を好んで読んでました。男っぽい漫画が好きで『刃牙』も読んでたな」

 さらには、

「戦争についてもよく学んでいました。アマゾンプライムでモノクロの戦争ドキュメンタリーのような映画を観ては“お前も観ろよ”と僕に薦めてくることがありました。高校の終盤になるとウクライナで戦争が始まって、“あそこ(ウクライナ)に派遣されて死んでくるわ”と冗談も口にしていましたよ」

 ゲームの趣味も戦争色が濃くなっていった。

「彼は本当にゲームが好きで、プレイステーションみたいな家庭用ゲーム機のゲームだけでなく、PCでやるようなタイプのものも含めてひと通りのFPS(一人称視点のシューティングゲーム)をやってました」

自衛隊の案内役と親しく

 やがて、Aは現実世界においても銃と戦争を志向するようになる。

「“海外に行ったら銃に触(さわ)れる。だから撃ってみたいよね”なんて話もしていましたね」(同)

 そのためかどうか、海外で自衛隊員として活動する夢を実際に語るようになったのだという。高校時代の先の友人が明かす。

「彼は高校3年生に上がるくらいのタイミングで自衛隊の入隊試験対策の勉強を始めて、放課後などに冊子を使って勉強していましたね。1日何時間かは必ず勉強していて、冊子を見せてもらったんですけど、重要なところにメモ書きもちゃんとしていました。自衛隊に入るモチベーションは高かったと思います。面接対策などいろいろやっていると聞きました」

 自衛隊熱は日々高まる一方だった。

「“見学会があるから行ってみない?”と誘われて、いちど一緒に岐阜県内の駐屯地に見学に行ったことがあります。その時は彼の里親に車で送り迎えをしてもらいました。自衛隊のカレーを食べたり、戦車や自動小銃、装備服の見学をしました。彼はテンションが高くて楽しそうにしていましたよ。何回も自衛隊の見学に行っていたので、自衛隊の案内役の人とも知り合いになっていました」

 熱を帯びやすいその性向は、友人らの記憶に刻まれるほどのものだった。

「自分が分からないことは納得できるまで追求したいという気持ちが強いヤツで、その過程で熱くなるという感じ。理由がなく怒るわけではないんだけど、周囲は彼の振る舞いが理解できないこともあった。例えば英語のテストでバツをもらった時のことです。彼は自分の解答が正解だと思い込んでるので、間違いと採点されたことに対して先生に抗議していました」(同級生のひとり)

次ページ:激高した父親

前へ 1 2 3 4 5 次へ

[4/5ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。