なぜ「中国雑技団」が日本へ? “燃焼系CM”出演が転機となりショッピングモールに引っ張りだこ
優しさや丁寧さに触れて来日を決意
当時、張さんは欧米に公演に行くことが多かった一方で、日本に来たことはなかった。それがなぜ、日本で雑技団を作ることになったのか。
「アメリカ公演に行く時、飛行機の乗り換えで成田空港の近くに一泊したことがありました。その時、ホテルや空港で日本人の優しさや丁寧さに触れて、どうしても日本に行きたいと思ったんです。もちろん日本語はまったく話せませんでしたけど、漢字があるからなんとかなるだろうと思っていました。両親は心配して反対しましたが、おじいちゃんは応援してくれました」
そして2000年、張さんは21歳で来日し、祖父の友人が団長を務める雑技団に参加することとなった。
「雑技団の寮に住んでいた上、団長もメンバーもみんな中国人だったので、言葉の心配はありませんでした。だから全然、日本語が上手くならなくて、のちのち苦労したんですけど……。小学校やお祭りなんかで公演するために日本各地を回って、公演が終わったら東京に帰ってくるという繰り返しでした」
人気CMシリーズに出演
その頃、張さんに仕事のオファーが殺到するきっかけとなった、ある出来事が起きた。
《♪燃焼系 燃焼系 アミノ式 燃焼系 燃焼系 アミノ式 こんな運動しなくても これ1本》というフレーズに聞き覚えはないだろうか。
2003年頃、テレビなどで流れたサントリーフーズの飲料品「燃焼系アミノ式」のCMシリーズだ。この歌に合わせてアクロバティックな動きをしている人物こそ張さんなのだ。
「ネクタイ姿の男性がビルの屋上で逆立ちしながら腕の力だけでポールを登っていくCMがあります。この『上昇サラリーマン』というCMが最初に出演したものです。当時、制作会社が色々なところに参考映像を送って、同じ技ができる人を探していたみたいなんです。オーディションには体操クラブの選手などもいたようですが、そもそもあの動きは中国雑技の技なので僕が一番うまくできたんですね」
「燃焼系アミノ式」のCMは人気となり、シリーズ化された。
「逆立ちしながら犬の散歩をしたり、人間ピラミッドで長縄跳びをするCMにも出ています。寝転がった女性の足の上で女の子がくるくる回る『くるくるピクニック』というCMでは、私がオーディションで女の子を選んで、1カ月くらい一緒に練習しました。足で女の子を回している女性も、中国雑技をやっている人です。子どもが落ちそうになったらすぐに助けられるように、横で新聞を読んでいる男性として私も出演しているんですよ」
CM出演の反響は大きく、一時は次々と仕事が舞い込むようになり、2009年には独立を決めた。
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