欧州の駐日大使館に勤務するフィリピン人清掃員を尾行して判明した意外な事実【元公安警察官の証言】

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中華街のレストラン

「2人の調査結果を大使に報告しました。大使も3週間の間に2人の勤務実態を調べていました。すると、女性秘書が長期の休暇を取っている間に、外交公電の中身が漏れていた可能性が高いことがわかったそうです。大使から『フィリピン人の清掃員に間違いない。もう一度調べてくれないか』と、再度依頼されました」

 勝丸氏は公安部の精鋭部隊と再び協議した。

「結局、私が都内の教会に潜入することになりました。私が教会へ行った日は件のフィリピン人男性が一人で来ていました」

 彼が席につくと、アジア系の女性が彼の隣に座った。

「女性は30代後半でした。私は彼らの真後ろに座ると怪しまれるので、少し離れたところから監視しました。彼らは英語で会話をしていましたが、内容はよく聞き取れませんでした」

 フィリピン人男性とアジア系の女性は一緒に讃美歌を歌い、ダンスを踊った。

「礼拝が終わると、2人は教会内で別れ、フィリピン人男性は仲間と話をしていました。私は、外で待機していた精鋭部隊にメールして、アジア系女性を尾行するように指示しました」

 女性は高輪から地下鉄で横浜方面へ向かった。

「彼女は中華街へ行きました。そして、中華レストランに入って行ったのです。実は、そこは警視庁公安部と神奈川県警の外事課がマークしている中国の諜報機関の関係者が拠点にしている店でした。後から女性も中国人であることが判明しました」

 女性は何時間も店から出てこなかったという。

「フィリピン人は教会で、女性に機密情報を伝えていた可能性があります。2人の行動を大使に報告したところ、納得したような表情をしていました。フィリピン人は大使室を清掃している際、印刷された外交公電を見てメモしていたと思われます」

 それから半年後。

「あるレセプションで大使と一緒になりました。すると、大使から『あの時はお世話になりました。例のフィリピン人は辞めてもらった』と言われました。大事にはせず、フィリピン人男性が遅刻など、細かいミスをしたことを理由に、契約更改をしなかったようです」

勝丸円覚
1990年代半ばに警視庁に入庁。2000年代初めに公安に配属されてから公安・外事畑を歩む。数年間外国の日本大使館にも勤務した経験を持ち数年前に退職。現在はセキュリティコンサルタントとして国内外で活躍中。「元公安警察 勝丸事務所のHP」https://katsumaru-office.tokyo/

デイリー新潮編集部

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